最近は日本でも少しずつ見かけるようになってきたブルンジ産コーヒー。
ブルンジは高品質なアフリカ系コーヒーの原産地として、特にヨーロッパで注目されています。
一般的にアフリカ系のコーヒーはしっかりした酸味、芳醇で重厚な風味といった特徴があります。
しかし、ブルンジ産のコーヒーは比較的酸味が穏やかで、後味に甘味をしっかり感じられるのが特徴です。
本記事では、そんなブルンジ産コーヒーの魅力を紹介していきます。
コーヒーの産地ブルンジとは
ブルンジ共和国、通称ブルンジは中部アフリカの内陸にあります。国土は四国のおよそ1.5倍ですが、連なる山々や、世界で2番目に深い湖であるタンガニーカ湖など、自然が豊かな国です。
農業が盛んで綿花や茶なども生産されていますが、なかでもコーヒー生産はブルンジの最重要産業であり、輸出品の80%以上を占めています。実は、ブルンジはコーヒーで国民の生活向上を目指す、貧しさと戦う農業国家なのです。
まずは、ブルンジという国の特徴やコーヒーの栽培環境を解説します。
ブルンジコーヒーの産地について
ブルンジは赤道の近くに位置しており、国土の大半が1500メートルを超える高原や山岳地帯であるため、コーヒー生産に適した環境です。
2012年にはCOE(Cup of Excellence:カップ・オブ・エクセレンス)を開催しました。アフリカではルワンダに次ぐ2番目の開催地となり、世界から注目されました。
COEでは、優れたコーヒー豆だけが出品されます。最大5回にも及ぶ厳しい審査を行い、通過したコーヒー豆だけがオークションにかけられます。
栽培されている品種は、その9割が高品質なアラビカ種です。特に原種かそれに近いブルボン種が大半と言われています。
水洗式で精選されたコーヒーは、近隣の有名生産国であるケニアや隣接するルワンダともまた違う、ブルンジならではの繊細な風味とバランスの取れた味わいがあります。
ブルンジにおけるコーヒー栽培の歴史
中央アフリカに位置する共和制の国家であるブルンジ。
コーヒー栽培を始めたきっかけは1930年代のベルギーの植民地時代に、ベルギー人がアラビカコーヒーの苗を持ち込んだことが始まりでした。
植民地時代を経て、1962年に独立しましたが、国内での民族間対立が深刻で1993年から約20年間は紛争が絶えませんでした。
2015年にはクーデターによる政権奪取や、多数の死者を出す抗争が繰り返され、治安悪化・政情の不安から産業の発展が遅れてしまいました。
ブルンジは一人当たりの年間GDP(国民総生産)が600ドルという、世界でもっとも貧しい国の一つなのです。
国民の55%にあたる人々がコーヒー産業に関わっており、収穫したコーヒー豆を他国へ輸出することで生計を立てています。
数人で運営するような小規模な農家が多く、貧しさから肥料や殺虫剤、機材などが買えないため、基本的に有機栽培で収穫や処理も手作業で行っています。
一見すると良いことのように見えますが、実際には教育・指導が行き届いていない、流通に問題があるなど、ブルンジ全体での品質向上には課題がありました。
そんなブルンジに変化が訪れます。政府は農業国ブルンジの経済をコーヒー産業で回復させる方針に切り替え、1990年代には国連のグルメコーヒープロジェクトの対象国に選ばれます。
民間や国営のコーヒー企業の尽力により、安定的な生産と品質の改善が始まります。2012年からはCOE(Cup of Excellence:カップ・オブ・エクセレンス)も行われるようになり、アフリカの最貧国であるにもかかわらず、ブルンジは高品質なスペシャリティーコーヒー原産国へと成長していきます。
なかでも、コーヒー農家を下支えする現地のエクスポーターであるGREENCOの存在は大きく、農家はより高品質なコーヒー豆の生産を目指して真摯に取り組むことができるのです。
ブルンジ産コーヒー豆の栽培環境
ブルンジ産のコーヒーは主に標高1,250m以上の高地で栽培されています。
山岳地帯が広がる熱帯性気候にもかかわらず、タンガニーカ湖の恩恵を受けるため涼しい気候でもあります。また、水はけのよい肥沃な土壌があり、適度な年間降水量と日照量に恵まれています。
難易度の高い高地栽培のコーヒーは、成長がゆっくりになりますが、昼夜の温度差が大きいので実が締まります。そのため、甘味をしっかり感じられる美味しいコーヒー豆となるのです。ブルンジ産コーヒーの甘味の秘密はここにあったのですね。
また、そのまま栽培すると日照量が多くなってしまうため、シェイドツリーと呼ばれるあえて太陽の光を遮る木と並列してコーヒーノキを栽培します。シェイドツリーの下では自然に生える藁状の植物や枝打ちをしたあとの葉などを肥料として、有機栽培に近い農法が用いられます。
シェードツリーはコーヒー農家が満足に肥料を買うことさえもが困難であるために始まったことでしたが、それが逆にオーガニックコーヒーとして人気になっています。
ブルンジ産コーヒー豆の生産状況
2019年のブルンジのコーヒー年間生産量は14,059トンで、コーヒー生産国量ランキング37位です。
日本におけるアフリカ産コーヒーのシェアは2012年の時点で6.3%、世界の他の地域と比べるとシェアはまだ小さいですが、これから日本でも伸びる余地が大きいといわれています。
最近はサードウェーブコーヒーの流行もあり、ブルンジ産のコーヒー豆も少しずつ日本で出回るようになっています。コーヒー専門店で見かけたときは、一度試してみてはいかがでしょうか。
代表的なコーヒーの産地は、「カルシ県(中西部)」、「カヤンザ県(北部)」、「ンゴジ県(北部)」です。
栽培地域は国の北半分に多く、コーヒー生産農家の87%が集中しています。
その中でもンゴジ県では国内のウォッシングステーションの約4分の1があり、最も生産が盛んな地域です。他にもカヤンザ県などは高品質なスペシャルティコーヒーを生み出しています。
ブルンジ産コーヒー豆の等級・グレード
ブルンジでは豆の等級を精製方法、豆のサイズ、生産地域から決めています。
【精製方法】
ナチュラル Natural(乾式)
フリーウォッシュド FW(完全に水洗式)
セミウォッシュド SW(半水洗式)
ハニー Honey(半水洗式)など
【サイズ・企画】
スクリーンサイズ:17~15
規格(品質):AA→A→B
豆のサイズをスクリーンサイズといい、 大きいほど高品質です。スクリーンサイズは約0.4㎜が世界標準単位で、サイズ15であれば「0.4×15=6.0」で約6.0㎜です。
ブルンジ産コーヒーの銘柄は、生産地+サイズ+精製方法で表されています。
まだまだ発展途上国の多いアフリカでは、他のコーヒー生産国のように農園名や生産者名がわかるような分類での商品作りが難しく、ウォッシングステーションのような生産者グループ単位での商品作りをしています。そのため、銘柄にウォッシングステーションの名前が入ることも多く見られます。
ブルンジ産コーヒーの特徴
ここからはブルンジ産コーヒーの精製方法、味わい・香りの特徴を解説します。
コーヒー産地ごとの味や香りの特徴が分かると、自分好みのコーヒー豆を選びやすくなるので、チェックしてみてください。
ブルンジ産コーヒーの精製方法
ブルンジ産コーヒーの精製方法として、ウォッシュド製法が多く採用されています。
ウォッシュドは、コーヒーチェリーを水で洗います。そのため、味の特徴はナチュラルプロセスのような果実を思わせる特徴的な風味の味わいというよりも、酸味があり、嫌な雑味や苦味が少ないクリーンな味わいになることが多いです。
ウォッシュドには生豆の精製度が高く、粒も揃っているというメリットがあります。しかし大量の水が必要なため、水資源が豊富な土地でないと難しいというデメリットがあります。
最近ではウォッシングステーションの中でハニープロセスで精製するところもあるようです。
ハニーは、果肉をあえて残すことで甘味が残りやすく、独特なフレーバーが楽しめるコーヒー豆になります。しかし、豆に果肉が残されるため乾燥時に発酵豆や欠点豆が出てしまうというデメリットがあります。
ブルンジ産コーヒーの味わい・香りの特徴
ブルンジ産コーヒーは、クリアな酸味、濃厚なコク、心地よい甘味が特徴です。
キリマンジャロで有名なタンザニアの隣国であるため、味の傾向も似ていると言われています。また他のアフリカ産コーヒーと比べると、酸味が穏やかで誰にでも飲みやすくバランスの取れた味になっています。
軽やかで爽やかな香りを感じたい場合は浅煎りに、チョコレートのような風味やコクを強く感じたい場合は深煎りにするなど、飲む人の好みに合わせて楽しむことが出来そうです。
ブルンジ産コーヒーの品種・種類
ここから、ブルンジ産コーヒーの品種・種類について解説します。
ブルボン種
ブルンジで栽培されているのは、90%以上がアラビカ種、その中でも特に原種かそれに近いブルボン種が大半と言われています。
ブルボン種が栽培されている有名な産地として、ブラジル、グアテマラ、ルワンダなどが挙げられます。日本では特にブルボン種コーヒーが好まれており、輸入量も増加しています。
他にも、「ミビリジ」「ジャクソン」といった品種も栽培されていますが、ブルボン種は病気に強く、収穫量も多いため栽培の大半を占めています。果実の色は黄色やピンク色になる物もあります。
ブルンジ産コーヒーの美味しい飲み方
品種や種類について理解を深めたところで、次はブルンジ産コーヒーの美味しい飲み方を紹介します。
豆の焙煎度合いや、コーヒー豆の挽き具合、淹れ方によって様々な味わいが楽しめます。
おすすめの焙煎度合い
一般的に、中煎りから極深煎りの順に「ミディアムロースト」「ハイロースト」「シティロースト」「フルシティロースト」がコーヒー専門店で焙煎され、売られる焙煎度合となっています。
浅煎りだとより明るい酸味が特徴のコーヒーになり、深煎りになるほど、苦味も強くなるが甘みは増すというのが一般的です。
では、ブルンジ産コーヒーのおすすめの焙煎度合いはどのあたりになるでしょうか?
中浅煎りにするとジューシーで豊かな香りを楽しむことができ、深煎りにすると豆本来の甘みからチョコレートのような風味を楽しむことができます。どちらも試してみたいですね。
おすすめの挽き具合
挽き具合は、道具に合わせて変えるのが一般的です。器具と挽き方の相性に気を付けながら、器具に合った粒度を意識してみましょう。
ペーパードリッパーやコーヒーメーカーで淹れるなら、中細挽きがおすすめです。
サイフォンやネルドリップ、フレンチプレスなどじっくりコーヒーを抽出するのであれば中挽きが良いでしょう。
おすすめの淹れ方
ブルンジ産コーヒーのおすすめの淹れ方としてネルドリップを紹介します。
ネルドリップは、「ネル」と呼ばれる布のフィルターを使ってコーヒーを淹れるドリップ方法で、コーヒーファンからは根強い人気があります。
淹れ方にはある程度技術が必要ですが、ブルンジ産コーヒーらしい豊かな香りとまろやかな風味を存分に味わうことができます。
もちろん、ペーパードリップでも十分にその香りを楽しめます。深煎りでも嫌な苦味は抑えられており、ストロングなコーヒーが苦手な方にも飲みやすいでしょう。
ミルクとの相性も良いので、カフェオレやラテとして飲むのもおすすめです。
ブルンジのおすすめコーヒー豆3選
ここから、ブルンジのおすすめコーヒー豆3選を紹介します。
グライトロースタリー(GRIGHT ROASTERY):ブルンジ ルゴリWSC
オーダーメイド焙煎商品のコーヒー豆。お店のおすすめはミディアム・ハイ(中浅煎り)での焙煎、みずみずしい果物の持つ風味、黒糖のような甘さが特徴です。
ルゴリ・コーヒーウォッシングステーション(3040名の生産農家:運営GREENCO)について
ブルンジ中北部、ンゴジ県ブシガにあるこのウォッシングステーションは王冠を意味する「ルゴリ」と名付けられました。様々な紛争の歴史を抱える土地であっても、人々がいつも元気に幸福を忘れずに、喜びを表現している様子に敬意を表しています。
加藤珈琲店:ブルンジ カップオブエクセレンス
COE(Cup of Excellence:カップ・オブ・エクセレンス)を受賞した、まさに選び抜かれたコーヒー豆。産地のミュジランプクは先ほど紹介したンゴジ県に近い中北部にあります。
香り良くすっきりとした飲み口でありながら、しっかりとコクも感じられるのが特徴です。
コーヒー愛好家のわがままに応えてくれているような、そんなコーヒー豆ですね。一度試してみてはいかがでしょうか。
チチャ 珈琲(Chi-cha coffee):ブルンジ★エキゾチックロースト キビンゴWSC
まろやかな口当たりで、りんごのようなジューシーで爽やかな酸味がありながらも、しっかりとしたチョコレートのようなコクや後味の甘みを感じることができるのが特徴です。
COE(Cup of Excellence:カップ・オブ・エクセレンス)では毎年受賞。高い標高の恩恵を受けた豊かな風味と、安定した品質が世界の注目を集めています。
キビンゴ・ウォッシングステーション(3500名18集落の生産農家:運営GREENCO)について
カヤンザ県カヤンザ地区は、ナイル川の水源地としても知られており、河川の浸食を防ぐために葦(アシ)が植えられています。
このアシという意味の現地語(KIBINGO)から、ウォッシングステーションを「キビンゴ」と名付けました。
キビンゴがコーヒーの品質向上に真摯に取り組み、評価を得てきた躍進の陰には、運営母体であり現地のエクスポーターでもある「GREENCO」の存在があります。
農家とGREENCOの二人三脚、地道な努力の積み重ねにより、スペシャルティコーヒーにとって理想的な循環が生まれています。
ブルンジ産コーヒーの特徴まとめ
今回は、ブルンジ産コーヒーの特徴について解説してきました。
世界でもっとも貧しい国の一つであるブルンジ、これから国の発展と高品質なコーヒーを両立できるかどうか、世界中から注目が集まっています。
産地の情勢や生産を支える人々の姿に思いを馳せながらコーヒーを飲んでみましょう。普段とは違ったコーヒーの楽しみ方が生まれるかもしれません。
ブルンジコーヒー以外にも、様々なおすすめのコーヒー豆を下記で紹介しています。