エルサルバドル産コーヒーは「ハニープロセス」と呼ばれる精製方法が主流で、その名の通り「蜂蜜のような甘み」が特徴です。
この甘みは中煎り〜深煎りでしっかり感じられます。深煎りにしてもフルーティーさが残るのも特徴です。
本記事では、エルサルバドルコーヒーの特徴や味や香り、おすすめコーヒー豆を紹介します。
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目次
エルサルバドル産コーヒーの特徴
エルサルバドルのコーヒーは「ハニープロセス」という精製方法で生産されます。
コーヒーの精製とは、収穫されたコーヒーの果実からコーヒー豆(種子)を取り出す作業のこと。
種子をどの段階で乾燥させるかで、いくつかの精製方法に分かれますが、大きく2種類(ナチュラル/乾式)(ウォッシュド/水洗式)に分類されます。
ナチュラルはコーヒーの種子を取り出して、そのまま乾燥させる方式。
ウォッシュドは表面の皮を剥がしてから発酵させ「ミューシレージ」という粘液質を除去する方式。
エルサルバドルの「ハニープロセス」は、ミューシレージを残したまま乾燥させる「パルプドナチュラル」と呼ばれる精製法のひとつです。
なお、ミューシレージを中米では「ミエル」と呼び、ハニー(蜂蜜)のこともミエルと呼ぶため、このパルプドナチュラル精製されたコーヒーは「ハニープロセス」と呼ばれます。
蜂蜜を思わせる甘い味わいとフルーティーさが特徴
ハニープロセスされたエルサルバドルのコーヒーは、名前の通り蜂蜜を思わせる甘い味わい、明るい酸味とコク、果実感があるフルーティーさが特徴です。
エルサルバドルで栽培されるコーヒーにはいくつかの品種がありますが、品種によって異なる味わいが楽しめるのも特徴です。
エルサルバドル産コーヒーの品種・種類
ここから、エルサルバドル産コーヒーの品種・種類について解説します。
エルサルバドルで収穫されるコーヒーはおもに「ブルボン種」ですが、ほかにも複数の種類があります。
中には希少性が高い銘柄もあるので、エルサルバドルで収穫される様々なコーヒーの品種を紹介します。
ブルボン種
コーヒーはまず「アラビカ種」と「カネフォラ種(ロブスタ種)」の2つに分類されますが、エルサルバドルで栽培されるコーヒーは「アラビカ種」のみ。
その約70%が、アラビカ種の原種とされている「ブルボン種/Bourbon」という品種です。
ブルボン種のコーヒー豆は丸くて小粒ですが、濃厚なコクや芳醇な風味、マイルドな甘味が特徴です。
しかし、ブルボン種のコーヒーは病気にかかりやすく、木の剪定など手間もかかるため、たくさん収穫するのが難しい品種です。
エルサルバドルがコーヒー豆の品種改良に積極的な理由は、病気に強くて手間の少ないコーヒーを作って、生産効率を上げるためと言えます。
パーカス種
パーカス種はエルサルバドルを代表するコーヒーの品種で、ブルボン亜種から生まれた突然変異種です。
味や香りの特徴ですが、ブルボン種に似ていてコクが深く、豊かな風味、やさしい甘味が特徴です。
ブルボン種に比べてコーヒーの木が小ぶりで暑さに強いため、日陰を作ってコーヒーの木を守る「シェードツリー」が必要なく、通常の品種よりも多く植えられ、病虫害にも強い品種です。
そのため、たくさんの量を収穫できるのがパーカス種の特徴です。
パカマラ種
パカマラ種とは、エルサルバドル発祥の人工交配種です。
コーヒー豆が非常に大きく、ゲイシャ種を思わせる「香水のような香り」「爽やかな酸味」「ほのかな甘み」が特徴です。
エルサルバドルでブルボン種から生まれた突然変異種の「パーカス種」と、ブラジルでティピカから生まれた突然変異種の「マラゴジッペ種」を交配させ、それぞれの良い所を残した品種がパカマラ種です。
パカマラ種の品質の高さは世界中でも有名で、今では多くのコーヒー生産国で栽培されています。
ゲイシャ種
ゲイシャ種は、アラビカ種の突然変異した在来種の一つです。
ゲイシャ種の味や香りの特徴ですが、モカに似た「華やかな香り」「爽やかな酸味」「紅茶のようなフルーティーさ」が特徴です。
ゲイシャ種ならではの「透明感のある風味」は、ほかのコーヒーで感じられないため「ゲイシャフレーバー」とも呼ばれています。
世界中から注目を集めるゲイシャ種ですが病気に弱く、樹高が高いこともあって栽培が難しく、収穫量が少ないコーヒー豆です。
希少性と品質の高さから、スペシャルティコーヒーの頂点に立っている品種と言われるのがゲイシャ種です。
エルサルバドル産コーヒー豆の等級・グレード
エルサルバドルでは、コーヒーが栽培された場所の「標高の高さ」で等級・グレードが決められます。
もっとも等級・グレードが高いコーヒーは、標高1200メートル以上で育てられた「ストリクトリー・ハイ・グロウン(SHG/Strictly High Grown)。」
次に等級・グレードが高いコーヒーが標高900メートルから1200メートルの間で育てられた「ハイ・グロウン/High Grown (HG)」。
最後に、標高900メートルから500メートル未満の「セントラル・スタンダード/Central Standard(CS)」と続きます。
エルサルバドル産コーヒーに限らず、コーヒー豆は標高が高いほど高品質とされ、価格もSHGがもっとも高いです。
おすすめの焙煎度合いは中煎りから深煎り
エルサルバドル産コーヒーのおすすめの焙煎度合いは、中煎り〜深煎り(ハイロースト〜フルシティロースト)です。
中煎りだと、特有の「蜂蜜のような優しい甘み」が感じられ、華やかな酸味もあって上品な味わいが楽しめます。
深煎りだと、ビターチョコレートのような甘みと、柑橘系フルーツの香りが特徴的なコーヒーが楽しめます。
エルサルバドルコーヒーの基本情報
中央アメリカ中部に位置するエルサルバドルは、コーヒーの産地として有名なグアテマラ、ホンジュラスと接していて南は太平洋に面しています。
日本の四国よりちょっと大きいくらいの国土ですが、約660万人が暮らす中米でもっとも人口密度が高い国です。
ここから、エルサルバドルという国の特徴やコーヒーの栽培環境を解説します。
国家がコーヒー栽培に取り組んでいるのが特徴
エルサルバドルというコーヒーの産地は、熱帯性気候と火山地帯でコーヒーノキを高地栽培できる環境を有し、コーヒーの栽培に非常に適しています。
エルサルバドルの経済を支える基幹産業は農業。中でもコーヒー栽培はエルサルバドルを代表する農産物で、一時は中米一のコーヒー生産量でした。
そして、エルサルバドルは国家がコーヒー栽培に取り組んでいるのが特徴で、国が保有する「エルサルバドル国立コーヒー研究所」は、コーヒーに関する最新技術と知識、豊富な資料を有しています。
また、エルサルバドルは国の象徴とされる「国花」がコーヒーの花であるように、国としてコーヒー栽培に力を入れているのが特徴的です。
コーヒー豆の栽培環境
エルサルバドル産コーヒー豆の栽培環境ですが、大きなコーヒー農園や機械を導入している農園は少なく、小規模農園が多いです。
エルサルバドルは火山地帯としても知られています。火山灰を含んだ土壌はミネラルが豊富で、コーヒーノキに栄養を与えられます。
日照量を調整する役割を担うシェードツリー(日陰木。その名の通り日陰を作るための背の高い樹木のことを指します)も、腐葉土となりコーヒーノキに栄養を届けます。
さらに、エルサルバドルは国土のほとんどが高地で標高が高いため、気温が上がり過ぎません。
コーヒーを栽培するにあたって、気温が高すぎると早熟や、収穫量が多くなり過ぎたり、樹の衰えや病気のリスクも増えます。
逆に気温が低すぎるとコーヒーの生育が遅れたり、収穫量が少なくなる可能性があります。
エルサルバドルは、コーヒー栽培に欠かせない「雨」も十分に降ります。
他国のコーヒー栽培に適した環境と同じように、エルサルバドルも雨期と乾期があるため、コーヒー豆を栽培する環境が良いのです。
エルサルバドルコーヒーの歴史
エルサルバドルにおけるコーヒー栽培の歴史ですが、この国ではコーヒーのことを「エル・グラーノ・デ・オロ(el grano de oro)」と呼んでいました。
これは「黄金の豆 (the grain of gold)」を意味し、コーヒー豆はエルサルバドルの命運を左右するものでした。
もともと、エルサルバドルの主な輸出品目はインディゴ(藍(らん)のこと)でしたが、1880年代になるとコーヒーがインディゴの輸出量を上回ります。
1920年代〜1930年代には、コーヒーの輸出量は国全体の輸出量の90%を占めるまでに増えました。
世界大恐慌が起こった1930年代の世界的な不況により、コーヒーの価格は以前の3分の1に下がります。
これに伴って労働者の賃金も下がるか、あるいは解雇されました。この影響で農村部での失業者が急増し、コーヒー畑は耕作放棄されます。
しかし、エルサルバドルのコーヒー産業は世界大恐慌後も生き残り、再び繁栄。1970年代までにエルサルバドルは世界で第4位のコーヒー輸出国へと成長します。
コーヒー豆の生産状況
エルサルバドル産コーヒー豆の生産状況ですが、現在では農業生産の約30%がコーヒー豆で、輸出総額の50%がコーヒー豆です。
2018年のエルサルバドルのコーヒー年間生産量は80,167トンで、コーヒー生産国量ランキング17位です。
エルサルバドルの代表的なコーヒーの産地は首都のサンサルバドル州、サンタアナ州、ラリベルタ州、ウスルタン州などが挙げられます。
エルサルバドルのコーヒー豆おすすめ3選
ここから、エルサルバドルのおすすめコーヒー豆3選を焙煎度別に紹介します。
焙煎度が浅ければフルーティーな酸味が他の楽しめ、焙煎度が深いとコクがあるコーヒーが味わえます。
1.エルサルバドル・ラ・レフォルマ農園(深煎り)
土居珈琲の「エルサルバドル・ラ・レフォルマ農園」は、オレンジやグレープフルーツのような柑橘系の香りと、ビターチョコレートのような甘みが特徴です。
コーヒーが冷めてくると蜂蜜のような優しい甘みが感じられます。淹れたてから冷めるまでの間で異なる美味しさが楽しめるため、飲み飽きない楽しさがあります。
このコーヒーは単品購入も可能ですが、同店で人気1位のコーヒー豆とセットになった「人気銘柄セット」がおすすめです。
土居珈琲
エルサルバドル・ラ・レフォルマ農園
2.エルサルバドル エルカルメン農園(中煎り)
bearscoffee本店のエルサルバドル(エルカルメン農園)は、チェリーのような甘みと爽やかな酸味、 力強いコクが特徴です。
ゲイシャ種にも似た華やかな香りがあり、カップオブエクセレンスなどの品評会・オークションでも高い評価を得ている注目の銘柄です。
豆のまま・コーヒー粉どちらでも届けてもらえるので、自分の環境にあった方法で注文できます。
bearscoffee本店
エルサルバドル(エルカルメン農園)
3.エルサルバドル サンタリタ農園(中深煎り)
▲自家焙煎珈琲やすらぎ エルサルバドル サンタリタ農園
自家焙煎珈琲やすらぎが手がける「エルサルバドル サンタリタ農園」は、シティローストとフルシティローストの中間の「中深煎り」。
上品なフルーティー感とキャラメルや、ナッツのような風味、ハチミツのような甘い余韻が特徴的です。
サンタリタ農園は高品質のコーヒーを作ることで有名で、いま注目を集める農園の一つです。
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