フルシティローストとは、8段階あるロースト(焙煎度合い)の中で上から3番目の焙煎度を指します。
コーヒー豆は深く焙煎するほど苦味が強くなりますが、フルシティローストは苦味と甘みが楽しめる焙煎度です。
コーヒーの甘みとは、お米を何度もかんだときに感じられる、あのほのかな「甘味」です。
苦味の対極とも言えそうな「甘み」という味の要素が、なぜフルシティローストでもっとも感じられるのか?詳しく解説していきます。
フルシティローストは8段階中、3番目に深い焙煎度合い
ローストの深さ(焙煎度合い)は、
この8段階に分類され、ローストの深さによって苦味や甘み、酸味の強さ、風味や香りがそれぞれ異なります。
ミディアムローストなど浅く焙煎されたコーヒーは酸味が強く、イタリアンローストなど深く焙煎されたコーヒーは苦味が強くなります。
フルシティローストのコーヒー豆をペーパードリップで抽出すると深いコクと苦味、豊潤な甘みとほのかな酸味が楽しめます。
フレンチプレスで抽出するとやや酸味が前面に出てきて、甘みが控えめになることが多く、アーモンドのような香味が立ちます。
ネルドリップで抽出すれば、非常に濃厚な甘みとコクの深い味わいが楽しめます。
抽出するコーヒー器具によって味わいは多少異なりますが、基本的にどの淹れ方でも苦味と甘みが楽しめるのがフルシティローストの特徴です。
フルシティローストがもっとも甘い理由
コーヒー生豆を深く焙煎するとなぜ甘みが出るのか?
生豆に熱を加えて焙煎することで化学変化がおき、コーヒー独自の苦味や甘み、香りが生まれます。
この化学変化とは、おもにメイラード反応、カラメル化、分解の3つを指します。
コーヒー生豆にはショ糖などの糖類が約60%も含まれており、焙煎によってカラメル化した成分は苦味に変わり、その他は甘味として残ります。
基本的に焙煎とは苦味を作り出す作業ですが、焙煎をミディアムローストあたりまで進めると酸味が生まれ、その酸味が甘味に変わり、苦味へと変化していきます。
さらに焙煎を進めれば、この「甘味」はなくなるため、甘味が残るギリギリの焙煎度合いがフルシティローストなのです。
そして、甘みが残るギリギリの焙煎度合いを見極めるのがとても難しく、ここは焙煎の技術の差が大きく出るポイントと言えます。
豆を焼きすぎることを恐れて早く仕上げればシティローストになり酸味が残ります。逆に深く焼きすぎればフレンチローストになり、苦味が強くなり甘味は少なくなります。
ちなみに、僕が今まで飲んだフルシティローストのコーヒーで「甘くおいしい」と感じた銘柄は土居珈琲のグァテマラ カペティロ農園と、ゴーシュのマンデリンシナール。
フルシティローストの豆はブラック・カフェオレにおすすめ
フルシティローストのコーヒーは、ブラックもしくはカフェオレ・カフェラテで飲むことをおすすめします。
お店の技術の結晶ともいえる「甘さを引き立てた焙煎」を感じながら、ゆっくり一口ずつ味わいたいのがフルシティローストのコーヒーです。
一段階上の焙煎度「フレンチロースト」よりもコクや苦味が控えめになるので、カフェオレやラテを作る際にはコーヒー6、ミルク4程度の割合で飲むと、コーヒーの味わいとミルクのまろやかさを両方楽しめます。
なお、コーヒー豆をネット通販で購入する際、土居珈琲など豆の販売店によっては、焙煎度合いの指定が可能です。
▲世界の品評会で3度にわたり1位を獲得したグァテマラ カペティロ農園。ハイローストからイタリアンローストまで5つの焙煎度合いから指定可能。
土居珈琲のように焙煎度合いを指定できるお店は多くありませんが、もし指定可能なお店を見つけたら同じコーヒー豆をフルシティローストとシティローストで飲み比べてみても面白いです。
本当においしいコーヒー豆が購入できるお店を日本中から10店厳選したので、本気で味にこだわる方はチェックしてみてください。
【2023年版】本当に美味しいコーヒー豆おすすめランキング20選
フルシティローストにおすすめのコーヒー豆はグァテマラ・マンデリンなど
▲土居珈琲のグァテマラ カペティロ農園。キャラメルを思わせる香ばしい甘み、豊潤な旨味、ビター感、上品な酸の一体感はまさに秀逸。
▲ゴーシュのマンデリンシナール。黒蜜のような甘みが印象的。雑味が一切なく透明感のある味により甘みが一層際立つ。
お店によって味は異なりますが、高い技術をもつ焙煎士がグァテマラやマンデリンなどのコーヒー豆をフルシティローストに仕上げると、豊かな甘味が感じられ、味全体がふくよかな印象になります。
どちらのコーヒー豆も、もともと酸味が強いため上手に焙煎することで重量感のある甘味に変わり、とても濃厚なコーヒーを楽しむことができます。
フルシティローストのコーヒーは個人的にはもっとも好きで、本当におすすめしたい銘柄がたくさんあるので、いくつか紹介します。
- 100g 925円:グァテマラ カペティロ農園(土居珈琲)
- 100g 925円:マンデリン スマトラタイガー(きゃろっと)
- 100g 900円:グァテマラ(銀座カフェ・ド・ランブル)
- 100g 875円:マンデリンシナール(ゴーシュ)
- 100g 580円:マンデリントバコG1(焙煎室ハンドピック)
フルシティローストは苦味と豊潤な甘みが楽しめる
「苦味とどっしりしたコクがある甘いコーヒーが飲みたい」という方にフルシティローストはおすすめの焙煎度合いです。
一杯で満足できる濃厚な味わいが楽しめるので、目覚めの朝などにフルシティローストの豆を選んでみて下さい。
なお、コーヒー豆の味わいはロースト(焙煎度合い)だけでなく、焙煎方式によっても味が大きく変わります。
主にどんな焙煎方式があり、焙煎方式による味の違いをこちらにまとめています。
コーヒー豆のローストや焙煎度合い・焙煎方式ごとの味の違いを解説
また、今回ご紹介したグァテマラやマンデリンなど、コーヒー豆には様々な種類があり、産地によって味わいや風味が微妙に異なります。
コーヒー豆の産地によって味がどう違うのか?こちらにまとめました。