ベトナムコーヒーが甘いコーヒーの主流だということをご存知でしょうか。
ベトナムのコーヒー豆は、香ばしい香りと強烈な苦み、後味にしっかりと残る渋みが特徴です。そして、深煎りして濃く抽出したコーヒーに、練乳をたっぷりと加えて甘いカフェオレにするという飲み方が一般的です。コーヒーはブラックでという常識が少し変化するかもしれません。
ベトナムという国は熱帯地域に属するため、地元の人たちにとっては冷たいベトナムコーヒーが一般的なスタイルです。
本記事ではベトナムコーヒーの魅力に迫るとともに、おすすめのコーヒー豆も紹介していきます。
コーヒーの産地ベトナムとは
ベトナムは南シナ海に面し、南北に広がる東南アジアの国です。
首都ハノイをはじめダナンなど、観光地としても人気の都市や活気のある街並みで知られています。
また、多くの歴史的建造物も残っています。首都ハノイにはベトナム戦争時代の収容所なども残されており、ベトナムの歴史を語る上では切り離せない場所となっています。
ベトナムの産地について
コーヒーはベトナムの主要な農林水産物とされており、ベトナムでは、コーヒーの輸出が農林水産物輸出額の約10%を占めています。
コーヒー生産量の上位を占めるダクラク省、ラムドン省、ダクノン省はすべて中南部高原地域に位置し、この3省が国内のコーヒー豆生産の8割近くを占めています。
世界的にも、ベトナムはブラジルに次ぐ第2位の生産量を誇っています。
ベトナムにおけるコーヒー栽培の歴史
ベトナムにおけるコーヒー栽培の歴史は、17世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパの宣教師がベトナムで布教を行った際に持ち込んだことが始まりとされています。
しかしこれらは小規模な栽培で、大規模に生産され始めたのはフランスがベトナムの占領を開始した1857年以降とされています。
フランスは1925年から、中部高原地方のダクラク省、ラムドン省で、少数民族を労働者としてコーヒーの栽培を始めました。
ラムドン省はアラビカ種、ダクラク省はロブスタ種の栽培に適していることがわかり、ベトナムは2001年にコーヒー輸出額世界2位となりました。
ベトナム産コーヒー豆の栽培環境
ベトナム産コーヒー豆の栽培環境は、中部の高原や南部に集中しています。
ベトナムロブスタ種は、カビ病に強く生産量が多いだけでなく、ベトナムの高温多湿な低地栽培にも適しています。そのため、世界全体のロブスタ種の生産量の4割近くを占めるという世界第1位の規模で、国内の生産量の90%以上がロブスタ種です。
一方で、気温や降水量に影響されやすく、カビ病にも弱いため栽培が難しいアラビカ種は、ベトナムの栽培環境には適していません。
ベトナム産コーヒー豆の生産状況
ベトナム産コーヒー豆の生産状況は、ロブスタ種は、その8割がベトナム中部の標高500mほどのダグラク省やラムドン省、ジャライ省の高原地域に集中しています。
アラビカ種の一部もラムドン省で栽培されています。
コーヒー生産で生計を立てている人は約260万人と言われています。コーヒー農園のほとんどは1~50ヘクタール未満の中小農園が中心となっています。
しかし、500ヘクタールを超すような大規模農園で大量生産を行うVinacafeのような国営企業もあります。
ベトナムは北半球に属するので、収穫は冬から春にかけての11月から3月に行われます。
ベトナム産コーヒー豆の等級・グレード
ベトナム産コーヒー豆の等級・グレードについて解説します。
豆の大きさ(スクリーンサイズ)と欠点豆の割合で決められ、G1が最高グレードです。
G1 | ・スクリーンサイズ:14~16
・欠点豆5%以下 |
G2 | ・スクリーンサイズ:12~14
・欠点豆10%以下 |
G3 | ・スクリーンサイズ:10~12
・欠点豆20%以下 |
ベトナム産コーヒーの特徴
ではここからは、ベトナム産コーヒーの精製方法、味わい・香りの特徴を解説します。
コーヒー産地ごとの味や香りの特徴が分かると、自分好みのコーヒー豆を選びやすくなるので、チェックしてみてください。
ベトナムのコーヒーは香ばしい香りと強烈な苦み、後味にしっかりと残る渋みが特徴です。但し、ロブスタ種本来の味はクセが強く飲みにくいため、深煎りして濃く抽出したコーヒーに、練乳をたっぷりと加えた甘いカフェオレにします。
ベトナムという国は熱帯地域に属し、一年を通して気温が高い国です。そのため、地元の人たちにとっては冷たいベトナムコーヒーが一般的なスタイルです。
ベトナム産コーヒーの精製方法
ベトナム産コーヒーの精製方法ですが、ロブスタ種コーヒーの生豆精製方法は、主にナチュラル(乾燥式)で行われ、収穫後のコーヒーチェリーを天日干し、または機械乾燥させています。
ベトナム産コーヒーの味わい・香りの特徴
ベトナム産コーヒーの味わいの特徴は、一口飲めば強い苦みと濃厚な甘みが広がり、ベトナムの熱帯気候にも負けないパンチのある味わいに驚かされます。
香ばしい香りが強いのも特徴です。匂いが少し強いことからそれを打ち消すためにきつめに焙煎をして苦味を出していることがほとんどです。この渋味こそベトナムコーヒーの特徴です。また、コーヒー豆の色がとても濃いのが特徴です。
ベトナム産コーヒーの品種・種類
ここから、ベトナム産コーヒーの品種・種類について解説します。
ロブスタ種:ベトナムロブスタ
ロブスタ種はアラビカ種に比べて、耐病性に優れ病害虫に強く、収穫できるコーヒー豆の量がアラビカ種よりも多いので生産性に優れたコーヒーです。
また、アラビカ種のコーヒー豆は標高1,000m以上の高地でなければ栽培できませんが、このロブスタ種は標高500m以下の比較的低い土地での栽培が可能であることも大きな特徴です。
栽培されて収穫されたコーヒー豆は非水洗式で処理されます。
香ばしい香りとしっかりとしたコクと苦み、渋味を強く感じることができます。また、酸味は感じられません。
カティモール種:エバーグリーン
カティモール種のコーヒーの生豆は美しい緑色をしています。生豆の粒が大きいのも特徴です。
サビ病等に耐性のある性質と、味や風味に関して品質の高い性質の両方を持つ品種を目指して研究を続けた結果、開発された品種がカティモール種です。
エバーグリーンは、無農薬で栽培され、赤く熟したコーヒー豆の果実は丁寧に手摘みで収穫されていきます。その後、天日干しで乾燥させてから、水洗式で精製されます。
エバーグリーンは、ほどよい酸味と果実のような甘みが特徴です。また、しっかりとしたコクとカカオのような心地よい渋味もあります。香りはナッツやハーブのような爽やかな香りですっきりとしています。
アラビカ種:ルビーマウンテン
ベトナムの中北部に位置する高原地帯のネアン地区で生産されています。コーヒーベルトに属しているので、コーヒーの栽培には最適な場所であると言えます。
丁寧に栽培され、ルビーのように赤く完熟したコーヒーの実を手摘みで収穫します。
太陽に天日干しして乾燥させてから、水洗式にて精製されます。コーヒー大国だけあって、栽培工程、精製工程も徹底的に管理されています。
柔らかな酸味と共に、優しいコクと苦みを感じることができるバランスの取れたコーヒーです。マイルドな口当たりと、ルビーマウンテン特有の香ばしさも楽しめるコーヒーです。
ベトナム産コーヒーの美味しい飲み方
品種や種類について理解を深めたところで、次はベトナム産コーヒーの美味しい飲み方を紹介します。
ベトナム産コーヒーは様々な入れ方があるため後ほど紹介させていただきます。
また、甘くして飲む方法が主流となっているためお好みのブレンドを探してみてはいかがでしょうか。
おすすめの焙煎度合い
ベトナム産コーヒーのおすすめの焙煎度合いは「深煎り」です。ベトナム産コーヒーは匂いが少し強いのですが、深煎りにすることで特有の匂いを打ち消すことができます。
おすすめの挽き具合
ベトナム産コーヒーのおすすめの挽き具合は「粗挽き」から「中挽き」。金属フィルターを用いる場合には粗挽きをおすすめします。
ベトナムコーヒーの入れ方(作り方)
ここからはベトナムコーヒーの入れ方を紹介します。入れ方のコツは丁寧にじっくりと時間をかけながら楽しむことです。
カフェ・フィンでの入れ方
まずは、カフェ・フィンを使ったベトナムコーヒーの入れ方を紹介します。
カフェ・フィンは植民地時代の宗主国フランスの金属フィルターをアレンジして作られたと言われています。
フィルターの穴が小さいことが特徴で、コーヒーの抽出に長い時間がかかります。長い時間をかけて抽出すると、お湯とコーヒー粉の触れる時間が長くなるため、抽出されるコーヒーも濃く仕上がります。
ペーパーフィルター(ドリッパー)での入れ方
次に、ペーパーフィルター(ドリッパー)を使ったベトナムコーヒーの入れ方を紹介します。
コーヒー豆を通常より多く入れれば普段使用している機器(コーヒーメーカー、ドリップコーヒー)でも美味しいベトナムコーヒーを入れることができます。
カフェ・フィンに比べ薄くなりやすいため時間をかけゆっくりと抽出するのがおすすめです。
目安として通常の豆の量は1人分10〜12gが適量ですが、ベトナムコーヒーの場合は15〜20gが適量です。
お手持ちの器具で手軽に入れられる反面、ベトナムコーヒーの特徴の「バター成分」も濾過されてしまうため、ベトナムコーヒーらしさが減ってしまうのが難点です。
金属フィルターでの入れ方
次に、金属フィルターを使ったベトナムコーヒーの入れ方を紹介します。
最近人気が高まりつつある金属フィルターもおすすめです。
金属フィルターはドリップコーヒーのようにコーヒーを抽出しますが、ペーパーフィルターを使わないので、コーヒーオイルをしっかりと味わうことができるのが特徴です。
そして、ベトナムコーヒーのバター成分も濾過されることなくそのまま抽出されるので、本格的なベトナムコーヒーを飲むことができます。
フレンチプレスでの入れ方
最後に、フレンチプレスを使ったベトナムコーヒーの入れ方を紹介します。
ベトナムコーヒーはもともと植民地時代にフランスからコーヒーが伝わりましたが、ベトナムの「カフェ・フィン」はこのフランスから伝わったフレンチプレスを簡略化したものだと言われています。
日本では紅茶を入れる方法として浸透しているフレンチプレスですが、もともとはフランス式のコーヒーを抽出する機器です。
カフェ・フィンと同様ペーパーフィルターを使わないので、コーヒーオイルなどの成分がそのまま抽出されます。
ベトナムのおすすめコーヒー豆3選
ここからは、ベトナム産のおすすめコーヒー豆3選を紹介します。
今回は、Amazonなどの通販や市販で気軽に買えるベトナム産コーヒーをセレクトしました。
チュングエンG7 3in1 インスタントコーヒー
ベトナムのお土産としても人気な3in1インスタントコーヒーです。ベトナムコーヒーの有名なブランド「チュングエン」のコーヒーがインスタントで手軽に味わえます。ほのかに甘くほろ苦く、病みつきになる味わいが特徴です。
CON SOC COFFEE:ヘーゼルナッツフレーバー
ジャコウネコのフンから採取されるコーヒーとして有名なのがインドネシアの「コピ・ルアク」ですが、こちらはリスのフンから採取されるというコーヒー。
酸味が少なく、ほどよい苦味とコク、ヘーゼルナッツの甘い香りが特徴です。お土産としてはもちろん、現地でもリピーターが多いおすすめコーヒーです。
ベトナム珈琲豆屋:ロブスタ ハニー
農薬を使わない自然栽培で作られた中煎りのロブスタコーヒー。ワインのような独特の香りと、完熟ロブスタ特有の甘みが特徴です。
ベトナム産コーヒーの特徴まとめ
本記事ではベトナム産コーヒーの特徴を解説してきました。
深みやコクのあるベトナムコーヒー。飲み方も、淹れ方も様々な種類があるため一見ハードルが高いように見えるコーヒーですが、自由に楽しむきっかけになるかもしれませんね。
ぜひご家庭やお仕事の合間などに、ベトナム産コーヒーでゆったりしたひとときを過ごしてください。
ベトナムコーヒー以外のおすすめのコーヒー豆も下記で紹介しています。あわせてチェックしてみて下さい。