世界で最も高価で希少なコーヒーとして有名なゲイシャコーヒー。
2004年、コーヒーの国際品評会である「ベスト・オブ・パナマ」で発表されたゲイシャコーヒーは、その圧倒的な個性で世界各国の審査員たちを驚かせました。
「コーヒーとは思えない」と讃えられる華やかで甘い香りと味は、ほかのどのコーヒーとも一線を画しています。
本記事では、そんなゲイシャコーヒーの魅力に迫るとともに、おすすめのコーヒー豆も紹介していきます。
ゲイシャ種のコーヒーとは?
ゲイシャコーヒーの原産地はエチオピア。東アフリカの内陸部に位置します。
エチオピアはゲイシャコーヒーのみならず、コーヒーの木の原産地と考えられています。
エチオピアの歴史は古く、伝説ではソロモン王とシバの女王の子供により建国されたとされています。
アフリカ最古の独立国であり現存する世界最古の独立国であるエチオピアは、美人が多いことでも有名です。
パナマ・エスメラルダ農園
栽培の難しいゲイシャコーヒーは、長い間忘れられていました。
パナマ、バル火山の麓、1600mの標高にエスメラルダ農園が誕生したのは1967年。
現在も農園主であるダニエル・ピーターソン氏の祖父がリタイア後の拠点として、その周辺一帯の農園を購入したことから始まりました。
1960年代から、コーヒーはその周辺の農家で栽培されていましたが、当時は品種を問わず収穫され、出荷されていました。
しかし1997年、パナマに「アメリカ葉斑病」というコーヒーの病気が広まり、コーヒー農園を荒廃させました。
そんな中、ダニエル氏は彼の農園に偶然植えられていたゲイシャ種のコーヒーの木だけ、あまり病気に侵されていないことを発見しました。
このことからダニエル氏は、彼の農園でゲイシャコーヒーをもっと多く栽培することを思いついたのです。
ゲイシャショック
2000年代になると、スペシャルティコーヒーという考え方が広まり、各地で品評会が開かれるようになりました。
エスメラルダ農園を有するピーターソン家では品評会に出品するため、コーヒーの品質管理に力を入れることにしました。
農園で栽培されているコーヒーを区画ごとに分け、高い精度で精製し、区画ごとの味を確かめました。
これがきっかけで再発見されたのがゲイシャコーヒーです。
2004年、コーヒーの国際品評会「ベスト・オブ・パナマ」でエスメラルダ農園はこのゲイシャコーヒーを出品します。
エスメラルダ農園のゲイシャ「ハラミージョ・スペシャル」はここで過去に見ない高額で落札され優勝。
ゲイシャコーヒーは世界にセンセーションを巻き起こします。
この出来事を「ゲイシャショック」と呼び、ゲイシャコーヒーはまたたく間に世界に名を轟かせたのです。
ゲイシャコーヒーの原産地はエチオピア
ゲイシャコーヒーの原産地は、コーヒーの木の原産地でもあるエチオピア。
その昔、エチオピアの羊飼いカルディが、コーヒーの赤い実を山羊が食べて元気になったのを見たことが、コーヒーを飲むきっかけになったと伝えられています。
エチオピアの国土は広い範囲が高地です。低い地域での年間平均気温が27℃〜50℃であるのに対し、高地での年間平均気温は16℃〜30℃と涼しく降水量も多いため、コーヒーの栽培に適しています。
ゲイシャコーヒー栽培の歴史
ゲイシャコーヒーの栽培の歴史は、1931年、エチオピアでアラビカ種の変種として発見されたことで始まりました。
長いコーヒの歴史の中ではかなり後になって発見された種と言えます。
ゲイシャの名前はエチオピアの南西部カファ地方、ゲシャという地域にこのコーヒーが自生していたことに由来します。
ゲイシャコーヒーはその後、ケニア、タンザニアを経由して、1953年にはコスタリカの農学研究所へたどり着きます。
しかし、そこでの栽培環境では味が悪く、注目されないまま時が流れました。
その後、中南米にも病気や害虫に耐性があるとして導入されますが生産性が低く、広く栽培されることはありませんでした。
パナマで偶然にダニエル・ピーターソン氏が病気耐性のあるコーヒーとして注目するまでは、忘れ去られていたのです。
ピーターソン家は初代農園主がバンク・オブ・アメリカの頭取で、二代目のプライス・ピーターソン氏は神経学博士でした。
プライス氏の科学的知識は、農園の経営に大きな影響をあたえました。
科学の知識に基づいた品質管理を試みたことで、ゲイシャコーヒーが素晴らしい味と香りを持つことが発見されたのです。
この偶然の重なりで、ゲイシャコーヒーは世界で最も高値で希少なコーヒーとなったのです。
ゲイシャコーヒーの栽培環境
ゲイシャコーヒー豆の栽培環境は、標高が高く火山灰土の熱帯雨林が適しています。
1500m〜1700mの高い標高を好み、パナマのエスメラルダ農園も偶然この条件にかなっていました。
ゲイシャコーヒーは他のアラビカ種のコーヒーの2倍の樹高(4m前後)になり、枝と枝の間隔も広いため機械の導入が困難です。
このようにゲイシャコーヒーの生産にはとても労力がかかるため、商業化は難しいと考えられていました。
ゲイシャコーヒーの生産状況
ゲイシャコーヒー豆の生産状況は、年間約7tと非常に希少です。
パナマのコーヒー生産量が約10100t(世界のコーヒー生産量の0.1%)であることから、比較するとその希少さが分かります。
ゲイシャショック以降、その価値が注目されているものの、まだまだ生産量は多くないと言えます。
ゲイシャコーヒーの等級・グレード
ゲイシャコーヒー豆の等級・グレードについて解説します。
ゲイシャコーヒーの産地、パナマではコーヒー豆の等級は栽培される標高によって決まります。
- SHB(ストリクトリー・ハード・ビーン)標高1350m以上
- HB(ハード・ビーン)標高1050m〜1350m
- EPW(エクストラ・プライム・ウオッシュド)標高900m〜1050m
パナマでは栽培地の標高が高いほど、コーヒー豆の実が締まっていてかたく、高品質なコーヒーとされています。
ゲイシャコーヒーの特徴
ではここから、ゲイシャコーヒーの精製方法、味わい・香りの特徴を解説します。
コーヒー産地ごとの味や香りの特徴が分かると、自分好みのコーヒー豆を選びやすくなるので、チェックしてみてください。
ゲイシャコーヒーの精製方法
ゲイシャコーヒーの精製方法は、3種類あります。
精製方法により、味と香りに大きく違いが生まれ、値段も変わります。
- ウオッシュド…水洗い式(果実をむき、豆を取り出して水につけて粘着質を取り除いてから乾燥)
- パルプド・ナチュラル・ハニー…非水洗い式(果実をむき、豆を取り出して洗わずに乾燥)
- ナチュラル…乾式(果実をむかずに乾燥)
ウオッシュドは収穫したコーヒーチェリーの果実を取り除き、発酵させた後に水洗いをしてから乾燥させます。
パルプド・ナチュラル・ハニーは粘着質を洗い流さず乾燥させる製法です。作られるのは全体のわずか5%ほどしかありません。
ナチュラルは収穫したコーヒーチェリーをそのまま天日干しにして、乾燥させてから脱穀してコーヒー豆を取り出す製法です。
ウオッシュドではゲイシャコーヒーの豆本来の味わいを綺麗に感じることができます。
これに対し、パルプド・ナチュラル・ハニーは水洗いしないことから、より果実の甘さが強調されます。
ナチュラルでは乾燥の工程で果肉が発酵することで、より濃厚で複雑な味わいに仕上がります。
ゲイシャコーヒーの味わい・香りの特徴
ゲイシャコーヒーの味わいの特徴は、圧倒的な華やかさと繊細な甘みにあります。
口の中でぱっと広がる明るい味は、ジャスミンの花と柑橘系のフルーツによくたとえられます。
またその華やかな味わいの奥には、熟したパイナップルやパッションフルーツのような濃厚な甘味と酸味もかすかに感じられます。
繊細でありながら奥ゆかしく、口の中でもワインのように表情が変わります。
香りの特徴は、香水にたとえられるほど強く香る甘い花や熟した柑橘のアロマ。
爽やかな甘い香りはジャスミンの花やアールグレイの紅茶のように芳醇です。
ゲイシャコーヒーの香りはまるで満開の春の花に囲まれるかのように瑞々しく、華やぐ甘さに深く包み込まれます。
味も香りも長く余韻が続き、見事に構成されたドラマのような体験ができます。
ゲイシャコーヒーの値段が高い理由
ゲイシャコーヒーの値段が高い理由には、その生産の難しさがあります。
ゲイシャ種のコーヒーの木は他のアラビカ種の木と比べて2倍ほども高く4mにも達し、実のなる数も少ないうえに、枝と枝の間隔が広く機械を導入しての収穫は困難です。
もともとゲイシャコーヒーの属するアラビカ種は病気や害虫に弱く、栽培にはとても手間がかかりました。
病気や害虫に少しでも耐性のある種ということでゲイシャ種は中南米に持ち込まれましたが、生産性の低さから広く普及することはありませんでした。
現在でもゲイシャコーヒーの収穫のほとんどは手作業で、忍耐と精度が求められます。
栽培に適した環境も、「標高の高い火山灰の肥沃な土壌で涼しく豊かな雨が降る場所」と非常に限られています。
このような理由からゲイシャコーヒーは高価で、その価値は今も上がり続けています。
ゲイシャコーヒーの品種・種類
ここから、ゲイシャコーヒーの品種・種類について解説します。
ゲイシャ種
ゲイシャ種はエチオピアのゲシャ地域で自生していたアラビカ種の亜種で、品種改良によって生まれたわけではありません。
アラビカ種から突然変異で生まれたため、原種に近い種のコーヒーだと考えられています。
樹高が高く、栽培にも収穫にも非常に手間のかかるゲイシャ種は、大量生産が困難です。
ゲイシャ種が発見された1931年、コーヒーを生業とする人々の間では、すでにゲシャ地方のコーヒーは美味しいと知られていました。
しかしその栽培の難しさと実のなる数の少なさから、パナマのエスメラルダ農園が復活させるまでは、コーヒーの歴史から忘れ去られていました。
2004年、「ゲイシャショック」と呼ばれるほどに衝撃的で輝かしい復活を遂げたゲイシャ種は、今でもその地位を保ち続けています。
ゲイシャコーヒーの美味しい飲み方
品種や種類について理解を深めたところで、次はゲイシャコーヒーの美味しい飲み方を紹介します。
ゲイシャコーヒーは豆の焙煎度合いや、コーヒー豆の挽き具合、淹れ方によってさまざまな味わいが楽しめます。
ゲイシャコーヒーが飲める店
2014年には一部のスターバックスコーヒーで1杯2000円で限定販売され、話題になったゲイシャコーヒー。
東京ではゲイシャコーヒー専門店「GESHARY COFFEE」・丸の内KITTEの「SAZA COFFEE」
名古屋では名東区の「コーヒー豆専門店豆蔵」・名駅ナインアワーズの「GLITCH COFFEE」
大阪では天王寺区の「上町珈琲」・西区の「Mel Coffee Roasters」
福岡では数店舗展開している「REC COFFEE」・「ハニー珈琲」
…などのコーヒー専門店でも味わうことができるほか、最近ではゲイシャコーヒーはネット通販でも手に入るようになりました。
おすすめの焙煎度合い
ゲイシャコーヒーのおすすめの焙煎度合いは、特有の華やかで繊細な味と香りを楽しめる浅煎り〜中浅煎りです。
おすすめの挽き具合
ゲイシャコーヒーのおすすめの挽き具合は、淹れ方により異なります。
- ペーパードリップ…中挽き〜中粗挽き
- ネルドリップ…中粗挽き
- フレンチプレス…粗挽き
いずれの場合もコーヒー豆を挽く際に「微粉」をできるだけ取り除くと、突き刺さるような苦味、酸味が少なくなり、華やかな味わいが際立ちます。
下記のような器具で微粉を取り除くのもおすすめです。
おすすめの淹れ方
ゲイシャコーヒーのおすすめの淹れ方は、75℃〜80℃くらいの低めの温度のお湯で、ゆっくりと時間をかけること。
淹れる方法によって、味わいと香りの表情が変わります。
- ペーパードリップ…ジャスミンや紅茶のようなアロマと、熟した柑橘のように甘く爽やかなゲイシャコーヒー特有の味わいが楽しめます。
- ネルドリップ…特有のジャスミンのようなアロマに、甘い蜜のような印象が加わります。花のような甘く奥深い味が広がり、華やかな余韻を残します。
- フレンチプレス…ゲイシャコーヒーの豆の持つ花の蜜のような繊細な甘さを感じることができます。柔らかく穏やかな味わいです。
ゲイシャコーヒーの特徴を最も強く感じることができるのはペーパードリップです。
挽いたときから漂う華やかな香りは、お湯を注ぐとまるで花に囲まれたかのように幸せなアロマとなります。
ゲイシャ種のおすすめコーヒー豆5選
ここから、ゲイシャ種のおすすめコーヒー豆5選を紹介します。
今回は、Amazonなどの通販や市販で気軽に買えるゲイシャコーヒーをセレクトしました。
パナマ・エスメラルダ農園ゲイシャ・プライベートコレクション・ウォッシュド
さまざまなコンテストで1位を独占する、パナマ・エスメラルダ農園のゲイシャコーヒーです。
「ゲイシャショック」と呼ばれる圧倒的なインパクトでゲイシャコーヒーを世に送り出したのがエスメラルダ農園。
それまで商業化は難しいとされていたゲイシャコーヒーは、数々の偶然と農園主の科学的知識により復活を遂げました。
その中でもさらに標高の高い場所で収穫された、ワンランク上のゲイシャコーヒーが味わえます。
サザコーヒー レギュラーコーヒー パナマゲイシャブレンド 豆 200g
パナマゲイシャの華やかで甘い柑橘系の香りとゴルダの香ばしいチョコレートのような甘さ、コロンビアの柔らかなコク。
芳醇でバランスの取れたブレンドコーヒーです。
深煎りですので、中挽きで低めの温度のお湯を短時間で注ぐのが美味しく淹れるコツです。
光を通さないサザコーヒー独自の保存袋で、コーヒーの鮮度を長く保つことができます。
Scrop パナマエスメラルダ農園ゲイシャ 中煎り
スペシャルティコーヒーの専門店が手がける、コーヒーギフトにもぴったりな箱入りのゲイシャコーヒー。2名のSCAA/CQI認定 Qグレーダーが品質の管理、豆の選定を行っています。
ゲイシャ モカ G1(エチオピア) 銀河コーヒー
ゲイシャ種の原産地、エチオピア産の最高品質ゲイシャコーヒーです。このゲイシャ モカ G1は、その中でも特に希少な最高等級(8段階中)で、ほとんど出会うことができません。
エチオピア産ゲイシャコーヒーの中から特に最高状態のコーヒーチェリーだけを選びぬいた逸品で、他のコーヒー豆にはない素晴らしい香りと味を体験できます。
STAR COFFEE DESIGN [ ゲイシャ ナチュラル ] ドリップバッグ 11g シングルオリジン
パナマ エスメラルダ農園で収穫されたゲイシャを100%使用したドリップバッグです。STAR COFFEE DESIGNが独自に買い付けたロットで、エスメラルダ農園の鑑定基準を満たしたコーヒーのみを使用。
注文後に焙煎して発送されるため新鮮なゲイシャコーヒーをお湯だけで手軽に楽しめます。
ゲイシャコーヒーの特徴まとめ
今回は、ゲイシャコーヒーの特徴について解説してきました。
初めてゲイシャコーヒーを飲むと、その他のコーヒーとは全く違う、高い香りと味に「これがコーヒーなのか?」と圧倒されます。
まだまだ生産量が少なく高価なスペシャルティコーヒーですが、コーヒー愛好家なら一度は味わっておきたいもの。
ぜひご家庭やお仕事の合間などに、ゲイシャコーヒーでゆったりしたひとときを過ごしてください。
ゲイシャコーヒー以外にも、さまざまなおすすめコーヒー豆を下記で紹介しています。