今では世界中で愛されているイタリア発祥のコーヒー、エスプレッソ。
エスプレッソは数あるイタリアの美味しいものの中でも特に輝く存在の1つで、イタリア人の生活にはなくてはならないものです。
このイタリアの誇りとも言えるエスプレッソの魅力に追ってみましょう。
本記事の監修者:山口 誠一郎
コーヒーの専門家としてTV出演。文藝春秋(文春オンライン)コラム掲載。1,000種以上のおすすめコーヒー豆をレビュー。イタリア「Caffè Arena Roma」元バリスタ。
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タップできる目次
エスプレッソとは
エスプレッソとは、コーヒー粉に圧力をかけて旨味を濃縮する抽出方法と、そのコーヒーのこと。
イタリアではコーヒー(caffe`=カフェ)といえばエスプレッソで、バールで立飲みするのが一般的です。
イタリア人にとって欠かせない楽しみの1つで、行きつけのバールへ一日に何回も通う人も多くいます
出勤前に1杯、ランチの後に1杯、仕事に行き詰まったら1杯、帰宅前に1杯、といった具合です。
イタリア人は皆、口を揃えて「コーヒーは力をくれる」と言います。
行きつけのバールで、馴染みのバリスタと話しながらほっと一休み。エスプレッソで元気を出してもうひと頑張り。
ブラックで飲む人もいれば、コーヒーと同量ほどの砂糖を投入して飲む人もいます。
一般には「ほんの少しの砂糖と一緒に」飲むのが美味しいとされていますが、そこはお好みで。
このイタリア人にとって生活の一部であるエスプレッソの魅力をさらに紹介していきます。
エスプレッソの歴史

1906年に開催された「ミラノ万国博覧会」。世界で初めてエスプレッソマシンが誕生した
エスプレッソの歴史は古く、ナポレオンの時代にまでさかのぼります。
アフリカのカメルーンでコーヒーが飲まれるようになってから、17世紀頃にはヨーロッパに伝わり、広く愛されていました。
ナポレオンはイギリスに対抗するため、イギリス製品をフランス領内でボイコットする「大陸封鎖令」を1806年に発令。
これにより、フランス植民地からのコーヒー豆の輸出も大幅に制限され、イタリアでもコーヒー豆が手に入りにくい状況が続きました。
この時期、チコリコーヒーなどのコーヒーの代替品がいくつも生まれますが、どれもコーヒーの美味しさにはかないません。
ローマでも閉店を余儀なくされるカフェが増える中、老舗「Caffe` Greco(カフェ・グレコ)」の三代目サルビオーニは、コーヒーの量を3分の2に減らして小さなカップで出し、価格を下げることでどうにかこの危機をしのぎました。
これが成功したカフェ・グレコは多くの姉妹店を展開し、このときの小さなカップがデミダス(フランス語でdemi=半分の tasse=カップ)の始まりとされます。
この時点ではまだコーヒーは現在のエスプレッソのようなものではありません。小さいカップに少ない量のコーヒーというスタイルが受け入れられただけです。
現在のように高圧力で濃いコーヒーを抽出するスタイルは1901年にルイージ・ベゼラによって発明されました。
その特許を買い取ったデジデリオ・パボーニはこの機械に「ベゼラ」と名付けて、1906年のミラノ万国博覧会に出展。
これがイタリアではとても好まれ、1961年にはエルネスト・ヴァレンテにより現在のエスプレッソマシンが開発されました。
エスプレッソはイタリアが長い時間をかけて育てた芸術のひとつとも言えるでしょう。
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エスプレッソとドリップコーヒーの違い
ここから、エスプレッソと普通のコーヒー(ドリップコーヒー)の違いを解説します。
エスプレッソの濃度は普通のコーヒーの約4〜5倍
エスプレッソはドリップコーヒーよりも濃いことは明白ですが、一体どれくらい濃いのでしょう。
濃度で比べるとエスプレッソが8〜11g/100gに対しドリップコーヒーは2〜3g/100gです。
エスプレッソの濃度はドリップコーヒーの約4〜5倍ということになります。
エスプレッソの液量はコーヒーの1/5
エスプレッソのカップ1杯の量は約25〜30mlです。
ドリップコーヒーのカップ1杯が120〜150mlなので、ずいぶんと少ないことがわかります。
量が少ないとすぐに冷めてしまうので、カップは分厚く作られることが多く、バールのエスプレッソマシンは機械の上でカップが温められるようになっています。
熱いコーヒーが苦手なイタリア人も居て、すぐに冷ましたいときは小さなガラスのカップやグラスにエスプレッソを作ってもらいます。
カフェインの量はエスプレッソ1杯の方が少ない
エスプレッソ30mlのカフェインの量は約60mg、ドリップコーヒー150mlのカフェインの量は約90mgです。
「エスプレッソのカフェインの量がドリップコーヒーより少ないのは嘘!」と言って読者の気を引く記事が見受けられるようになりました。
しかし、この主張をしている記事のほとんどが100mlのエスプレッソと100mlのドリップコーヒーでカフェイン量を比較した結果を示しています。
デミタスカップ3杯分に相当する100mlのエスプレッソを飲むことは基本的にありませんし、ドリップコーヒー100mlは少し物足りません。
コーヒーのカフェイン量は、飲み方(スタイル)1杯あたりのカフェインの量で比べるほうが妥当と言えます。
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エスプレッソとコーヒーは豆の種類が違う

エスプレッソ用のコーヒー豆にはアラビカ種とロブスタ種をブレンドするのが一般的
カップ1杯あたりに必要なコーヒー豆の量は、エスプレッソが約6〜12g、ドリップコーヒーが約8〜12gです。
コーヒー豆の種類は、エスプレッソにもともと使われていたのは濃厚で香ばしいロブスタ種のコーヒー豆でした。
しかし、イタリアでも世界中のコーヒー豆が手に入るようになると、アラビカ種とロブスタ種のブレンドが主体となり、今ではアラビカ種100%のエスプレッソも広まっています。
エスプレッソ用コーヒー豆を手がける有名ブランド「illy(イリー)」ではアラビカ種のコーヒー豆だけを扱い、ロブスタ種は一切使用しません。
一方、ドリップコーヒーはアラビカ種が主体で飲まれることがほとんどです。「スペシャルティコーヒー」という考え方が浸透してきたのも、ドリップコーヒーでアラビカ種が選ばれるようになった要因のひとつと言えます。
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豆の挽き具合・焙煎度合いの違い
エスプレッソの豆の挽き具合は極細挽きが定番です。
焙煎度合いは一番深煎りの「イタリアンロースト」と思われがちですが、実際はシティロースト〜フルシティローストが定番です。
ラバッツァ(LAVAZZA)など、イタリアのメーカーから「ミディアムロースト」として販売されるコーヒー豆は日本でいう「シティロースト」のことです。(浅煎りのミディアムローストではない)
ドリップコーヒーは使う抽出器具によって豆の挽き具合が異なり、苦味と酸味のバランスの好みによって焙煎度合いもさまざまです。
ペーパードリップやコーヒーメーカーで淹れる場合は中細挽き。苦味と酸味のバランスを楽しむなら中煎り〜中深煎りがメジャーです。
抽出器具・作り方の違い
エスプレッソの抽出器具には、お店でお馴染みの大きな業務用エスプレッソマシンと、それを小型にした家庭用エスプレッソマシンがあります。
押し固めたコーヒー粉にエスプレッソマシンで9気圧の圧力をかけて抽出するため、ドリップ式では味わえない濃厚なコーヒーが完成します。
また「マキネッタ」と呼ばれる直火式のコーヒーメーカーもあって、イタリアの家庭には必ず1つはあると言われるほど広く愛されています。
エスプレッソの抽出器具は金属製のものが多く、コーヒーの油膜がなじんで手入れの行き届いた古いものの方がよいとされています。

ドリップコーヒーは上からお湯を注いで抽出する
一方、ドリップコーヒーの抽出器具は基本的にサーバーの上にドリッパーを置いて、上からお湯を注いで下のサーバーにコーヒーを抽出します。
エスプレッソよりもさっぱりした味わいで、ゆっくりと味わう特徴があります。
ドリップコーヒーに使う器具もフィルター以外はずっと使えるものです。
どのパーツをとっても様々なバリエーションがあり、ドリッパーの種類を変えるだけで、味わいの変化を楽しめます。
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見た目の違い
エスプレッソマシンで抽出するコーヒーの最大の特徴は「クレマ」または「スキューマ」と呼ばれるコーヒーの泡です。
クレマには苦味成分が凝縮していて、液体部分より一層香ばしく、またイタリア人にとってはこのコーヒーに浮かぶ豊かな泡を見ること自体が幸せでもあります。
クレマと液体の部分の味の違いを楽しむのも、エスプレッソの醍醐味です。時間が経って泡が消えたエスプレッソは泡部分にあった苦味成分が液体の中に落ちてしまいます。
マキネッタで作るコーヒーも、上手く作れば上部にコーヒーが上がってくるときに泡ができますが、ほとんどの場合、カップに注ぐ前に消えてしまいます。
しかし、もともとマキネッタで作るエスプレッソは、エスプレッソマシンで作るよりもまろやかになるため、カップに泡はなくても「マキネッタで作ったエスプレッソのほうが好き」というイタリア人も多いのです。
ドリップコーヒーには泡はできませんが、豆の種類や焙煎、フィルターの違いによって、液体自体の色や透明度も様々です。
黒く不透明なコーヒーばかりでなく、紅茶のように赤みのかかった色や、透明感のある仕上がりのドリップコーヒーもあります。
エスプレッソは楽しみ方のバリエーションが豊富
カプチーノ
イタリアの朝ご飯の定番とも言えるカプチーノ。
イタリアでは焼きたてのクロワッサン「ブリオッシュ」と合わせてバールで朝ごはんを済ませる人も非常に多く、朝のバールは大賑わいです。
カプチーノ(cappuccino)とは「頭巾・フード」を表すcappucioに「小さい・かわいい」という意味を付け加える-ino(男性名詞単数)を合わせた言葉です。
大きなカップにエスプレッソを作り、そこに「エスプレッソ」「ミルクの液体部分」「ミルクの泡」が1:1:1になるように作るのが基本です。
カプチーノのミルクの量はキアロ(chiaro=明るい・薄い)とシクロ(sicuro=暗い・濃い)で調節してもらいます。
ミルク多めのカプチーノだったら「カプチーノ・キアロ」といった具合です。
寒い日に飲むふわふわで暖かいカプチーノはとても幸せな気分になれます。
カフェマキアート
マキアート(macchiato)とは「染める、シミを付ける」という意味の動詞・macchiareの過去形で、名詞のあとについて「〜された」という意味をもたせます。
つまりは「染められた、シミの付いた」という意味で、エスプレッソをミルクで染めるイメージです。
カフェマキアートは、エスプレッソにスチーマーで泡立てながら温めたミルクを少し加えたコーヒーを指します。
エスプレッソの濃い香ばしさと苦味、ふわりとしたミルクのまろやかさと甘さが見事なハーモニーを奏でます。
もちろん「リストレット・マキアート」「ルンゴ・マキアート」という注文の仕方もあります。
「リストレットにミルク多めのマキアート、ガラスのカップで」や「ルンゴに泡だけのマキアート、大きいカップで」など、こだわりのスタイルでエスプレッソを飲む人もいます。
マキアートでエスプレッソを飲むイタリア人は非常に多く、マキアートあり派・なし派で比べても、どちらが多いのかわからないほど愛されています。
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カフェラテ
ラテ(latte)とは「乳」の意味で、日常的に一番多く使われるのは牛乳なので、単にラテまたはラッテと言えば牛乳を指します。
イタリアでカフェラテといえば、エスプレッソになみなみと150ml〜200mlほどの泡立てないホットミルクを注ぎます。
味わいはカプチーノよりもさらにマイルドで、温まりたいときには最適です。
朝ごはんや小腹が空いたときなどにも、ミルクたっぷりのカフェラテはよく飲まれます。
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ドッピオ
ドッピオ(doppio)は「2倍」という意味です。
エスプレッソマシンには抽出口が1つのものと2つのものがあり、ドッピオは2つ口の方を使って1つのカップに2杯分のエスプレッソを作ります。
単純に一度に2杯分のエスプレッソを飲みたいときに注文します。
イタリアのバールでドッピオを頼むと「仕事が忙しいの?」とバリスタが心配そうに聞いてくることも。
イタリア人はのんびりしているので、ドッピオ1杯を飲むよりも、2回バールに来てコーヒーを飲めばいいと考える人も多くいます。
一気に2杯分を飲むと「すごく眠いのかな?」「忙しいのかな?」と気遣ってくれるのです。
日本人には普通のエスプレッソでは量が物足りない時があります。
エスプレッソの濃さをそのままに量が2倍飲めるのがドッピオです。
リストレット
リストレット(ristretto=限定された)と言う人もいますが、イタリアではバッソ(basso=低い)と言って注文する人もいます。
エスプレッソマシンでの作り方は至って簡単で、通常のエスプレッソの半分の量まで出たら出来上がり。
エスプレッソは抽出し始めに一番濃く、そこにコーヒーの美味しい所が凝縮されていて、長く抽出するほど薄まっていきます。
抽出時間が短い分、通常のエスプレッソよりリストレットの方がカフェイン量が少なくなりますが、味のインパクトは強くなります。
普段から常にドッピオを飲むイタリア人はほとんどいませんが、常にリストレットを飲む人はいます。
リストレットはコーヒー豆の苦味が2倍というわけではなく、コーヒー豆の持つ甘みや酸味も濃く抽出されるので、エスプレッソの楽しみ方のひとつとして、誰もが認める存在です。
量と抽出時間は2分の1ですが、使う豆の量が同じなので価格は普通のエスプレッソと同じです。
カフェルンゴ

引用:coffeecircle
ルンゴ(lungo)とはイタリア語で「長い」という意味です。
リストレットとは逆に、普通のエスプレッソのおよそ2倍の量になるまで抽出したのがルンゴです。
ルンゴと注文を受けたら、コーヒーがエスプレッソの小さなカップにいっぱいになるまで待ってから出します。
こちらもイタリアではリストレットと同様に、好みでいつもルンゴを飲む人がいます。その日の気分や一緒に食べるドルチェ(スイーツ)に合わせてルンゴにすることもあります。
リストレットやルンゴはメニューにはありませんが、どこでも注文可能です。
また、どちらもマキアートにすることができます。
アフォガート
アフォガート(affogato)は「溺れた」という意味で、レストランで食後に「アフォガート」と言えば、バニラアイスクリームにエスプレッソをかけて食べるものを指します。
冷たいアイスクリームに熱いエスプレッソをかけると、アイスクリームがとろりと溶けて美味しいデザートのできあがりです。
食の場面でアフォガートというと「アイスクリームが溺れている」というイメージで、液体部分はエスプレッソとは限りません。
リキュールやコーラをあわせてもアフォガートです。
エスプレッソで作るアフォガートは「アフォガート アル カフェ」ですが、レストランではドルチェの欄に単に「アフォガート」とだけ書いてあることもよくあります。
シェケラート
イタリアにももちろんアイスコーヒーはありますが、このシェケラートは特別なアイスコーヒーです。
エスプレッソを氷で満たしたシェイカーにいれて、ほんの少しガムシロップを加えシェイカーで振った飲みものです。
冷やしたシャンパングラスに素早く注いだらできあがり。暑い夏の日の至福の一杯です。
シェケラートを作るときは、普段ブラックでコーヒーを飲む人も、少量でもよいので砂糖かガムシロップを加えてください。
糖分が入っていないと、できあがった瞬間の細かい炭酸のような泡立ちが上手く出ません。
アメリカーノ
アメリカーノ(Americano)をバールのエスプレッソマシンで作るときは、まずスチーマーでお湯を用意して、大きいカップでエスプレッソを作り、用意しておいたお湯で薄めて出します。
イタリア人でアメリカーノを飲む人はかなり少数派です。
外国からの移住者や旅行客に主に飲まれている、といった印象です。イタリア人の多くはこのアメリカーノという飲み方をあまり支持しない傾向にあります。
薄めのコーヒーならルンゴを飲むし、体を気遣うならデカフェインナートかオルゾ(caffe` d'orzo=大麦コーヒー)を飲むので、あえてアメリカーノを飲む場面がないのです。
しかし、濃くて量の少ないエスプレッソに慣れない人には、ペーパードリップのコーヒーほどに薄められたアメリカーノはホッとする1杯となるでしょう。
イタリアのバールではメニューに無くても「ウン カフェ アメリカーノ ペルファボーレ」と伝えれば、どこでも注文できます。
ロングブラック

引用:alliancecoffee
アメリカーノがコーヒーにお湯を注ぐのに対し、ロングブラックはお湯にコーヒーを注ぎます。ペーパードリップのコーヒー程度にエスプレッソを薄めたものです。
エスプレッソを美味しくする要素としてクレマ(またはスキューマ=泡)があります。
アメリカーノの作り方の場合、エスプレッソを抽出した際にできる泡はお湯を注ぐときに消えてしまいます。
ロングブラックはクレマを保つためにカップに先にお湯を注いでおいて、後からエスプレッソを注ぎます。
エスプレッソ独特の香ばしい苦味が多く含まれる泡が残ることによって、アメリカーノよりエスプレッソの特徴を残した味わいになります。
しかし、イタリアのバールで3年以上バリスタとして働いていましたが、 「ロングブラック」は一度も聞いたことのない言葉です。
もともと、アメリカーノすら「コーヒーとして認めない」という人の多いイタリアのバールで「ロングブラック」がすんなり出てくることは難しいでしょう。
どうしてもイタリアのバールでロングブラックが飲みたい人は、あれこれ説明するのはいっそ省いて、エスプレッソと大きなカップにお湯を別々に注文すれば確実です。
キャラメルマキアート
スターバックスコーヒーが世に広めたと言ってもいいほどの「キャラメルマキアート」。
カプチーノやカフェラテをキャラメル味のシロップで味付けしたものです。バニラシロップも合わせて加えられることがあります。
とてもアメリカらしいコーヒーの飲み方という印象を受けます。
きっとイタリアの子どもたちも喜ぶ味だと思いますが、筆者がイタリアに住んでいた頃には、まだスターバックスは街に一軒もありませんでした。
カフェモカ
一般的にコーヒーで「モカ」と言うと、主にエチオピアやイエメンで生産されるアラビカ種のコーヒーを指しますが、「カフェモカ」はまた別物です。
エスプレッソにミルクとチョコレートシロップを入れ、さらにホイップクリームとチョコレートソースで仕上げたものです。
アイスでもホットでも美味しく飲めます。
これもアメリカ発祥の飲み物で、イタリアのバールにはありません。
しかし、コーヒーとチョコレートの相性が最高に良いことはコーヒーが好きな人ならほとんどが認める事実。
イタリア人から見ると、もはや「飲み物なのかデザートなのかわからない」という領域のものです。
エスプレッソトニック
エスプレッソトニックは、氷を入れたグラスに炭酸水、エスプレッソの順に注いだ爽やかなドリンクです。
2010年頃に北欧のカフェで誕生して、特にオーストラリアでは夏の定番として定着しています。
エスプレッソと炭酸水は1:3くらいで作るのが一般的です。エスプレッソを注ぐときにシュワッと泡が上がってくるので、サイズに余裕のある大きめのグラスで作ってください。(レモンフレーバーの炭酸水で作っても美味しくできます。)
ちなみに、こちらもイタリアでは聞いたことのない名前でした。
フラットホワイト

引用:tasteatlas
フラットホワイトとは、カフェラテとカプチーノの中間くらいのものですが、厳密な定義はありません。
カプチーノのように大きなカップにエスプレッソを作り、スチーマーで泡立てないように温めたミルクを注いだものです。
エスプレッソに対して空気を含んだなめらかなミルクを1:2くらいの割合で注いで作ります。
こちらはロングブラックと共に、オーストラリアやニュージーランドで愛されていたスタイルで、最近は日本でも美味しいと話題になっています。
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美味しいエスプレッソの作り方
美味しいエスプレッソの作り方は以下の3点が決め手になります。
- エスプレッソに使うコーヒー豆の種類は?
- 最適なエスプレッソマシンは?
- どんな手順で作ればいいの?
順番に解説します。
イタリアで人気!3つのエスプレッソ用のコーヒー豆
先述の通り、エスプレッソが誕生した当時は手に入りやすかったロブスタ種が使われていました。
栽培の難しいアラビカ種も手に入るようになると、エスプレッソのコーヒー豆でもブレンドの試行錯誤が始まりました。
栽培技術の向上により、アラビカ種のコーヒー豆はどんどん市場に出回るようになり、甘くフルーティな香りと味のアラビカ種がエスプレッソの豆としても選ばれる割合が増え続けます。
今ではアラビカ種100%のエスプレッソ用コーヒー豆も珍しくありません。
この項目では、イタリアで人気のエスプレッソ用コーヒー豆を3つ紹介します。
どの商品も最近の流行りのテイストを取り入れつつ、伝統的なエスプレッソの醍醐味を一層追求した素晴らしいブレンドです。
ずっと飲んでいても飽きのこない良質なエスプレッソを、コーヒー専門店だけでなく、普段の家庭からオフィスなど、様々な場面で楽しめます。
ただし、初めてエスプレッソのコーヒー豆の缶タイプを開けるときは要注意です。イタリアのエスプレッソ缶は開ける時とても飛び散りやすいので、ゆっくり開封してください。
イリー: ブレンド エスプレッソ 粉 モカ ミディアムロースト (クラシコ)
エスプレッソの豆としては焙煎度合いがかなり浅めのミディアムローストのコーヒー豆。
illy(イリー)は世界9カ国から厳選したアラビカ種のコーヒー豆をオリジナルレシピでブレンドしています。
豊かな香りとバランスの取れた味わいで、マキネッタに適しています。
ミディアムローストなのでドリップコーヒーとしても楽しめます。
缶のフタが金属製なのもポイントで、2回目からは詰替え用を購入すれば缶を使い続けることができます。
ラバッツァ :クオリタ オロ 缶入 250g
イタリアでコーヒー豆のシェア1位を誇るLAVAZZA(ラバッツァ)。
エスプレッソらしい苦味とコク、バランスの取れた酸味を味わえるコーヒー豆です。
門外不出のブレンド・焙煎技術で作られた良質なコーヒー豆なので、ドリップコーヒーとしても美味しく味わえます。
深い苦味とコク・香ばしい香りは、ミルクと砂糖を加えて本場イタリアのスタイルで楽しむのにも最適。
LAVAZZAは120年以上の伝統があり、イタリアで年間270億杯も飲まれている実力の味です。
キンボ :エスプレッソ粉 ゴールド 250g
illy、LAVAZZAと並んで、とくにイタリアの家庭でよく飲まれているのがKIMBO(キンボ)です。
上記の2つが北イタリアのメーカーであるのに対し、KIMBOは南イタリア・ナポリのメーカーです。
価格以上の味だと評判のコーヒー豆で、日本でもリピーターが多い人気商品です。アラビカ種100%で、強く濃厚なコクとチョコレートを思わせる芳香が特徴です。
ゴールドはその中でも特にバランスの取れた味わいで、イタリアの家庭でも「時々いろいろ試すけど、やっぱりKIMBOのゴールドに戻るんだよね」という声をよく聞きました。
エスプレッソマシンの選び方
エスプレッソマシンは全自動・セミオート・手動式・直火式・カプセル式があります。
それぞれの特徴を解説します。
全自動の特徴
本格的なエスプレッソが失敗なく飲める、まさに文明の賜物がこの全自動式マシン。
中には豆を挽くところからできるモデルや、メモリー機能でお気に入りのレシピを記憶しておけるモデルもあります。
これなら不器用な人でも安定して美味しいエスプレッソを自宅で手軽に作れます。一日に何杯も飲むという人にもおすすめです。
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セミオートの特徴
バールなどにある業務用エスプレッソマシンや、その家庭用モデルがセミオートにあたります。
作る過程から楽しみたい人には、この伝統のスタイルが良いでしょう。
エスプレッソ作る過程で色々と工夫を凝らして、美味しいエスプレッソができあがったときの喜びは、コーヒーの楽しみを何倍にも大きくしてくれます。
セミオートモデルではとくに、作る前にしっかりと機械を温めておいてください。
手動式の特徴
「エスプレッソを自宅で作りたいけど、家庭用エスプレッソマシンを置く場所がない」「エスプレッソをアウトドアで楽しみたい」という人にはこの手動式がおすすめです。
その名の通り、手動式ポンプで圧力をかけてエスプレッソを抽出します。
ボディはなんと水筒ほどのサイズの製品があり、電力も不要です。
電気式のエスプレッソマシンより少し出来上がりの温度が低くなりますが、小さなサイズのボディでエスプレッソが作れてしまうおすすめのタイプです。
直火式の特徴
イタリアでは「マキネッタ(macchinetta)」と呼ばれ、各家庭で美味しいコーヒーを作るために育てるように大切にされています。
イタリアでの発音は「マッキネッタ」です。
macchinettaとは「機械」という意味のmacchinaに「小さな・かわいい」などの意味をもたせる-tta(女性名詞単数)をつけた言葉です。
マキネッタの使い始めは金属臭がして、おいしいコーヒーが作れるように買ってすぐは何度かコーヒーを作って飲まずに捨てることもあります。
お手入れは水のみで洗ってください。コーヒーの油膜が馴染んでくると、美味しいコーヒーが作れます。
マキネッタはそれ自体を育てるのも楽しみのひとつで、古いマキネッタはイタリア人にとって自慢でもあります。
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カプセル式の特徴
カプセル式は専用の機械に、1杯分のコーヒーの粉が入ったバッグのようなスタイルや、カプセルに入ったポーションをセットして作るスタイルです。
機械も全自動エスプレッソマシンやセミオートに比べてコンパクトで、コーヒー豆がカプセルに密閉されているので、品質の劣化が起きにくいメリットがあります。
出来上がりまでの時間も短く、操作も簡単なので不器用な人でも安心。
バリエーション豊富な豆やフレーバーコーヒーも販売されていて、いろいろな味がお手軽に楽しめるのも魅力です。
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エスプレッソの味の決め手「タンピング」

エスプレッソの味の決め手の一つが「タンピング」
エスプレッソマシンでコーヒーを作るとき、一番のポイントはタンパーというスタンプのような道具で押して、豆の表面を水平にすることです。(これをタンピングといいます)
私がイタリアのバールでバリスタを始めたときには、「コーヒー豆の粉を均一に整えるように押しながら、表面を水平にすると美味しいコーヒーができる」と教わりました。
なぜこれが重要かというと、コーヒー粉の表面が水平でないと、上から「面」でかかってくるお湯の圧力を、コーヒー豆に均等にかけることができないからです。
ちなみに、「水平にするコツは?」と聞いたところ、店主の答えは「愛を込めて押すこと」「コーヒー豆が恋人だったらどう押すか?力いっぱい潰す?違うよね」でした。
今思えば、なんともイタリア人らしい詩的な(そして曖昧な)答え方です。はじめはタンピングを難しく感じましたが、数をこなすうちに素早くできるようになりました。
「良いバリスタはコーヒーを作る音も音楽のように心地よい」と言われます。
エスプレッソの特徴まとめ
今回は、エスプレッソの特徴について解説してきました。
本場イタリアのエスプレッソが、今では日本でも味わえるようになりました。
エスプレッソの楽しみ方はイタリアでも、また世界中でも様々です。
ぜひ、ご家庭やお仕事の合間などに、エスプレッソを飲んでゆったりしたひとときを過ごしてください。
76種類のコーヒー豆を飲み比べてみた【ランキング一覧表】
Amazonや楽天、有名ブランドなどのコーヒー豆76種類をお取り寄せして、実際に飲み比べました。
有名なスタバやカルディをはじめ、丸山珈琲やサザコーヒーなどの人気店の味わいを50段階で数値化し、ランキングの順位を決定しました。
この記事では、酸っぱくないフルーティーなコーヒー豆や、酸味が少なくい飲みやすいコーヒー豆などを中心に紹介しており、100gあたり300円台で買えるコスパの良い商品も取り上げています。
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