コーヒーが好きな人なら一度は目にしたことがある「マキアート」
カフェマキアート、ラテマキアート、キャラメルマキアート…
どれもおしゃれでおいしそうな響きがします。
マキアートと聞くと「ミルクを使ったコーヒー」をイメージするかもしれません。
しかし、「マキアート」という言葉自体にはミルクという意味はありません。
コーヒーが好きなら知っておきたい「マキアート」についてイタリア目線から解説します。
簡単な作り方も紹介しますので、おいしいマキアートをお家で楽しんでみてください。
この記事を書いたライター
orchidea77
エスプレッソの本場イタリアでバリスタとして従事した経験を持つ。現在は大学の研究室で働きながら、コーヒーの知見を活かしてWEBライターとしても活動中。
タップできる目次
そもそもマキアートとは?
マキアートとは「macchiato=シミの付いた、染められた」という意味のイタリア語です。
イタリアのバールでは、普通のエスプレッソを注文したあとに「ちょっとミルクを入れてほしいな」と思ったときは、
「un po di macchia per favore(ウン ポ ディ マッキア ペルファボーレ)」
とバリスタに頼むと、温かいフォームドミルクをひと挿し注いでくれます。
「ちょっと染めて」といったニュアンスです。
そんなちょっと染まったコーヒー「マキアート」について、詳しく見てみましょう。
材料はエスプレッソとミルク
マキアートはイタリア語で「caffè macchiato(カフェ マッキアート)」と言います。
「マキアート1杯お願いします」と注文すると、小さなカップのエスプレッソに泡立てたミルクを少し注いだものが出てきます。
エスプレッソは深煎りのコーヒー豆を極細挽きにして、圧力をかけて抽出したとても濃いコーヒーです。
クリームのように泡立ったミルクと合わせると風味が引き立ちます。
高圧でコーヒーを抽出するバールのエスプエッソマシーンにはスチーマー(高圧力を利用してスチームでミルクや水を温めるノズル)が付いています。
バールではこのスチーマーで作ったフォームドミルクを使ってマキアートやカプチーノを作ります。
「マキアート」の英語の意味
「キャラメルマキアート」はアメリカで生まれた飲み物です。
アメリカのスターバックスコーヒーでは「クラウドマキアート」と呼ばれる、卵白を利用したフワフワなコーヒーも登場しています。
コーヒーに少しだけミルクを注ぐイタリアに対して、アメリカのコーヒーショップではミルクに少しだけコーヒーを注ぐことが多い印象です。
アメリカでも「マキアート」という言葉は、そのままイタリア由来の外来語として使われています。
マキアートという言葉が持つ「染める」イメージは、アメリカに外来語として伝わったあとでも残っています。
イタリア式とアメリカ式
イタリアのバールで「マキアート」の名がつく飲み物は主に「カフェ マキアート」と「ラテ マキアート」の2つです。
「キャラメルマキアート」や「モカマキアート」はメニューにありません。
エスプレッソにミルクを入れるかどうかは気分で決める人も多く、後から思い立ってエスプレッソにミルクを入れてもらうこともできます。
イタリアのバールは基本的に立ち飲みで、店に長居しないことが前提となっています。
時間に余裕のあるときにはバリスタとゆっくり話をしながらコーヒーを飲んで一息、ということも可能です。
しかし、朝の出勤前の混雑しているバールでは、時間のかかるメニューがあるとバリスタも客もイライラしてしまいます。
そのため、イタリアのバールでは作るのに時間のかからないメニューが多くなっています。
日本ではスターバックスコーヒーやタリーズコーヒーの影響が大きく、「マキアート」といえばアメリカ式が主流になっています。
エスプレッソにフォームドミルクを注いで、フレーバーをつけたりホイップクリームやチョコレートをトッピングするスタイルはアメリカ式の飲み方です。
頑固なイタリア人はアメリカ式のマキアートを認めないかもしれませんが、どんなコーヒーでも楽しむ日本人の自由な発想は素晴らしいものです。
マキアートに似たコーヒーメニュー
マキアートはエスプレッソに少しのフォードミルクを注いだものですが、他にもコーヒーとミルクの組み合わせた飲み物があります。
カフェオレ、カフェラテ、カプチーノ、カフェモカ…
いろいろなスタイルのコーヒーが気軽に楽しめるようになりました。
それぞれの違いを確認してみましょう。
カフェオレ
「カフェオレ(café au lait)」はフランス語です。
一般的に、カップに同量のドリップコーヒーとミルクを注いで作ります。
カフェラテと比較されることが多いカフェオレですが、ドリップコーヒーを使用するためカフェラテよりもさっぱりとした風味になります。
ミルクの量もカフェラテより少ないので、カロリーも低くなります。
朝に飲むとお腹への負担が大きいコーヒーを、ミルクを加えて飲みやすくしたのがカフェオレの始まりです。
今ではフランスの朝の定番メニューになっています。
カフェラテ
「カフェラテ(caffè lette)」はイタリア語です。
イタリアのバールではエスプレッソ1杯分のコーヒーと、カフェラテ専用の縦長のグラス1杯の泡立てずに温めたミルクで作ります。
カフェラテはカフェオレよりも濃厚な味わいです。
カフェラテは少量のエスプレッソにミルクを混ぜて作るため、ミルクがエスプレッソの4倍程度の量になります。
イタリアでは朝の定番はカプチーノという印象があるかもしれませんが、家庭ではカフェラテも日常的に飲まれています。
バールでもカフェラテを飲むことができますが、エスプレッソやマキアート、カプチーノに比べると注文される割合は少ないです。
バールではコーヒーのおいしいクレマ(エスプレッソ抽出するときにできる泡)を楽しみたい人が多数派であるのが理由だと思われます。
カプチーノ
「カプチーノ(cappuccino)」はイタリア語です。
イタリアの朝の定番ですが、最近では日本でも親しまれるようになってきました。
エスプレッソの香ばしいクレマもフォームドミルクのフワフワも味わうことができる飲み物です。
基本的なコーヒー・ミルク・ミルクの泡の割合は1:1:1で、コーヒーの味わいもしっかり感じられます。
エスプレッソやマキアートは量が少ないのですぐに冷めてしまいますが、カプチーノはしばらく温度を保つことができます。
朝ごはんのブリオッシュ(イタリアのクロワッサン)を食べながら、温かいコーヒーを飲むにはカプチーノが一番適しています。
カフェモカ
「カフェモカ」はアメリカのシアトル系コーヒーショップで生まれた飲み物です。
伝統的なイタリアのバールや、フランスのカフェにカフェモカはありません。
エスプレッソをベースにチョコレートシロップを入れ、フォームドミルクを注いだ後にホイップクリームとチョコレートソースをトッピングします。
スターバックスコーヒーではバニラシロップも入っています。
香ばしいエスプレッソと相性のいいものを詰め込んだ、デザートのような楽しい飲み物です。
マキアートの作り方
マキアートは自宅でもちょっとした工夫でおいしく作ることができます。
バールでのマキアートの作り方を参考に、自宅でもおいしいマキアートを楽しみましょう。
エスプレッソのクレマやフォームドミルクは、コツを知っておけば上手に作ることができます。
それでは、上手く作るためのポイントを確認してみましょう。
エスプレッソを作る
バールでのエスプレッソマシンを使ったエスプレッソの入れ方を紹介します。
- 「ポルタフィルター」と呼ばれる持ち手のついた器具に、専用のグラインダーから決まった量のコーヒー豆を入れます。
- 「タンパー」と呼ばれる金属製のスタンプのような器具で、ポルタフィルターの中のコーヒー豆を均等に整えながら表面を水平にします。
- エスプレッソマシンにセットしてカップを置き、抽出ボタンを押します。
- 30mlほど出たら完成です。
バールでは混雑する朝に大量のコーヒーを作る必要があるため、作り方はとてもシンプルです。
エスプレッソマシンで作るエスプレッソの味は、使うコーヒー豆とバリスタの「タンパーさばき」で決まります。
タンパーでコーヒー豆を押すときは、力いっぱい押して平らにすればいいわけでなく、コーヒー豆の中の空間を整えるように詰めつつ、表面にお湯の圧力が均等にかかるように水平にすることが大切です。
フォームドミルクを作る
フォームドミルクはエスプレッソマシンのスチームノズル(スチーマー)で作ります。この時にできる泡立った部分をフォームドミルク、下にできる液体部分をスチームミルクと呼びます。
フォームドミルクを作るためには、成分無調整の乳脂肪分が多い新鮮なミルクを使ってください。
- 冷たいミルクサーバーに冷蔵庫から出した冷たいミルクを注ぎます。冷たいミルクのほうが上手く泡立ちます。
- スチーマーをミルクに入れる前にシュッシュッと吹かして、余分な水滴などを取り除き温かい蒸気がすぐ出るように準備します。
- ミルクを泡立てる場合は、ノズルをミルクの表面近くの深さでキープして空気がなめらかに混ざるようにします。
- 少し経って泡が立ち始めたら、ミルクサーバーを傾けて蒸気を回すように泡立てます。
- ミルクサーバーにしっかり手を当てながら温度を確認します。高温になりすぎるとミルクの風味もなめらかな泡も失われてしまうので65℃程度にします。
- トントンと軽くミルクサーバーの底を打ち付けてフォームドミルクを整えます。
フォームドミルクはスチーマーなしでも作れます。
電動式のミルクフォーマーや手動の泡立て器で泡立てます。
ミルクを65℃程度に温めてから、ミルクフォーマーを上下に動かして泡立てます。
手動の泡立て器が小さい場合は、カップの中で一気に泡立てればフォームドミルクを作ることができます。
手動の泡立て器が大きい場合は、鍋でミルクを65℃程度に温めて空気を含ませるように手早く泡立てましょう。
エスプレッソにミルクを注ぐ
マキアートの場合、スプーン1杯程度の少量のフォームドミルクを注ぎます。
エスプレッソが30mlとしたらフォームドミルクは10mlくらいです。
量の少ないエスプレッソは冷めやすいので、カップやソーサーをしっかり温めておいて、手早く作りましょう。
エスプレッソにフォームドミルクを注ぐときは、泡が液体部分に遅れないように目でしっかり確認しながらそっと注ぎます。
泡だけ浮かべたいときはスプーンですくってポン、と入れる方法もあります。
おいしいマキアートを作るポイント
マキアートをおいしく作るためにはいくつかの重要なポイントがあります。
エスプレッソと滑らかなフォームドミルクがおいしいことが大切ですが、その2つがさらに引き立つ条件を揃えると一層おいしくなります。
エスプレッソのクレマは必須
エスプレッソマシンでコーヒーを抽出する際にできる、コーヒーの泡の部分をクレマ(crema=泡)と言います。
クレマには液体部分よりも苦味部分が多く含まれ香りも高く、液体部分とのコントラストもエスプレッソの楽しみのひとつです。
イタリア人がバールに足繁く通うのは、このクレマを楽しむためでもあります。
クレマは古いコーヒー豆だと上手くできません。豊かなクレマは新鮮なコーヒー豆の証でもあるのです。
マキアートやカプチーノでは、このエスプレッソのクレマとフォームドミルクが混ざり合う部分もおいしいポイントです。
フォームドミルクは成分無調整乳で作る
フォームドミルクは成分無調整のミルクを使ってください。
ミルクはエスプレッソとの味のバランスを考えると、乳脂肪分3.6%以上のものがいいでしょう。また、新鮮であることも大切です。
ミルクをスチーマーで温める場合、冷たいミルクを使えば泡立てる時間が長くなるので、なめらかに泡立てやすくなります。
ミルクの温度は65℃〜70℃程度を目安に温めすぎないように注意しましょう。
ミルクフォーマーや泡立て器でどうしても泡立たないときは、きび砂糖などの糖分を少し加えると泡立ちやすくなります。
おすすめ器具:ビアレッティのブリッカ
(出展:BIALETTI 『NEW BRIKKA』)
イタリアでは一家にひとつはあるという直火式エスプレッソ抽出機「マキネッタ」の圧倒的シェア1位を誇るBIALRTTI(ビアレッティ)から、特殊バルブを内蔵して本格的なクレマを作ることができる進化版モデルが発売されました。
大きな家庭用エスプレッソマシンがなくても、これで簡単にエスプレッソのクレマが楽しめます。
スペック
ビアレッティのブリッカは公式ページで2cupサイズ9,020円、4capサイズ9,350円の2種類が発売されています。
容量は2capサイズで80ml、4capサイズで160mlです。
IHには対応していませんので注意してください。
手軽にエスプレッソが作れる
ビアレッティの新しいブリッカは直火式でもエスプレッソのクレマを手軽に楽しめるようになりました。
マキネッタは入れるコーヒー豆や水の量が少ないと十分な圧力がかからずおいしいエスプレッソを抽出できません。
いつも決まった量を使用して作りましょう。
特殊バルブでクレマができる
エスプレッソマシンのような本格的なクレマができる秘密は、新しく内蔵された特殊バルブにあります。
この特殊バルブにより、最後に2倍の圧力をかけて豊かなクレマを作り出します。
上手くクレマを出すために、エスプレッソ用の極細挽きで新鮮なコーヒー豆を使い、スペックに合った量を作りましょう。
特殊バルブは詰まりやすいので、ブラシなどでこまめに手入れしてください。
従来のマキネッタ同様、洗うときは洗剤なしの水洗いです。
使い方
- 上部のタンクを使って、下部のタンクに適量の水を入れます。
- 下部のタンクにフィルターバスケットをセットします。
- バスケットにコーヒー豆を入れ、底を軽くトントンと叩きつけてコーヒー豆を整えます。
- バスケットの縁にコーヒー豆がはみ出ていたら取り除いておきます。
- 上部タンクをしっかり閉めます。
- 下部タンクの底からはみ出ないほどの火にかけます。
- コポコポと音がしたらコーヒーがサーッと上がってきます。クレマが出終わったらできあがり。
マキアートのまとめ
香ばしいエスプレッソに、ふんわりフォームドミルクを少しだけ注いだマキアート。
エスプレッソのほろ苦いクレマにほんのり甘いミルクの泡が混ざりあい、見た目もなんだか嬉しくなります。
マキアートはストレートのエスプレッソよりも味がまろやかになり、コーヒーとミルクが引き立て合い、小さなカップに素晴らしい味わいのハーモニーができあがります。
育てる楽しみもあるビアレッティのブリッカを使えば、マキネッタでクレマも作れて自宅でのコーヒーの楽しみがさらに広がります。