コスタリカのコーヒー豆は、気候や環境が異なる国内の8つの地域で栽培されています。
その50%以上がスペシャルティコーヒーとして取引されるほど、良質な生豆として有名です。
コスタリカ独自の「ハニープロセス」を経て精製されるコーヒー豆は、柑橘系の香りと酸味が特徴的で、世界中のコーヒーファンから大きな支持を得ています。
そんなコスタリカ産コーヒーの特徴、味や香り、おすすめコーヒー豆も紹介していきます。
コーヒーの産地コスタリカとは
スペイン語で「豊かな海」という意味を持つコスタリカ共和国は、中央アメリカの南に位置し、東はカリブ海、西は太平洋に面している人口約499万人の小さな国です。
国土は51,000平方キロメートルと北海道の面積の半分にも満たず、その国土の半分は海抜500m以上の高地で、首都サンホセも海抜1,150mに位置しています。
コスタリカは中米で最も早くコーヒー豆の栽培を始めた国ですが、そんなコスタリカで栽培されているコーヒー豆の栽培環境や生産状況について紹介します。
コスタリカの気候風土について
コスタリカという産地は、海抜0mの地域や標高3,000m以上の高地など、高低差の激しい地形になっています。そのため、温暖湿潤気候、サバンナ気候、熱帯雨林気候など複数の気候が混ざり合っています。
国土の4割以上が森林地帯であり、また国内には数多くの国立公園を有しています。地球上の約5%の動植物が生息することから「地上の楽園」と呼ばれており、「環境保護先進国」としても有名です。
コスタリカには明確に降水量が異なる乾季と雨季があります。また赤道近くに位置する熱帯地域のため、年間を通して安定した気温と日照量があります。
ただし、緯度が10度と低いことから強い直射日光が当たってしまうため、コーヒー栽培では「シェードツリー」という人工的な日陰を作り、日射量を調整しています。
さらに、国土の中央を背骨のように走る山脈には9つの活火山があり、コスタリカの土壌は火山灰が含まれた熱帯酸性質です。
ミネラルが豊富で保水力にも優れていることから、コーヒーの木も根を伸ばしやすく、より丈夫に育てることができるなど、コーヒー栽培に最適な環境が整っています。
コスタリカにおけるコーヒー栽培の歴史
コスタリカにおけるコーヒー栽培の歴史は、18世紀から始まります。
キューバよりコーヒーノキが持ち込まれ、理想的な環境下で栽培量が増えていき、19世紀には輸出されるほどの生産量になりました。
そして、コーヒー豆の供給量の安定と品質・ブランドを保護するため、さらにコーヒー栽培による環境破壊対策のために、1933年にコスタリカコーヒー協会(ICAFE)が設立され、生産から輸出までの技術的指導をコーヒー農家に対して行うなど、国を挙げてコーヒー栽培の支援を行っています。
さらに、コスタリカ政府はコスタリカ産のコーヒー豆の生産体制を整備する目的で、1988年からアラビカ種以外のコーヒー豆の生産を法律で禁止しています。
コーヒー豆の生産を禁止する法律があるのは世界でもコスタリカのみです。
2000年代に入ると「マイクロ・ミル革命」が起こり、生産体制に変化が現れました。
もともと16世紀にスペインの植民地だったコスタリカは、独立した中小規模の農家が主体であったことから、ブラジルや中南米のように大きなプランテーションにはなりませんでした。
コスタリカのコーヒー農家は、農協や輸出業者などにコーヒーチェリーを販売して生計を立てていました。しかし、高品質なコーヒー豆を栽培しても買取価格が低いため、収穫労働者に賃金を払うとコーヒー農家の手元にはほとんど利益が残りませんでした。
特に、生産量の少ない高い標高にある農家は、経営的に厳しい状況にありました。
そこで登場したのが「マイクロ・ミル」という考え方です。
コーヒー農家からコーヒーチェリーを買い取った業者は、ウェットミルと呼ばれる水洗施設にコーヒーチェリーを持ち込むのが一般的でした。しかし、コーヒー農家が集まって小規模のウェットミルを作り、生産から乾燥までを一貫して行うことで、高品質なコーヒー豆を高値で販売できるようになったのです。
現在、マイクロ・ミルはコスタリカ産コーヒー豆の新しい生産体制として、世界中のバイヤーにも広く認知されています。
コスタリカ産コーヒー豆の栽培環境
コスタリカ産コーヒー豆の栽培環境は、環境の異なる8つの生産地域に8万軒以上のコーヒー農家があり、そのうち約9割が小規模農家です。
また、コーヒー農園の80%以上が標高800m〜1,600mの高地にあり、主な生産地であるタラスを始めセントラルバレー、オロシ、トゥリアルバ、ブルンカといった生産地が山岳地帯を中心に広がっています。
特にタラスは生産地域の中でも一番の高地にあり、他の地域よりも乾燥が強く、酸性の強い土壌が特徴的です。ここで栽培されたコーヒー豆は高品質だと高い評価を受けています。
コスタリカ産コーヒー豆の生産状況
コスタリカ産コーヒー豆の生産状況は、2019年の生産量が84,096 トンです。これはコーヒー生産量ランキング世界15位です。
コスタリカでコーヒー豆は、バナナやパイナップルなどに並ぶ伝統的な農作物のひとつになっています。
コスタリカ産コーヒー豆の等級・グレード
コスタリカ産コーヒー豆の等級・グレードについて解説します。
コスタリカのコーヒー豆は、太平洋側とカリブ海側のどちら側で栽培されたかに加えて、栽培された土地の標高によって等級やグレードが決定します。
太平洋側では、標高1200m以上1650m未満はSHB(ストリクトリー・ハード・ビーン)、標高1000m以上1200m未満はGHB(グッド・ハード・ビーン)、標高800m以上1000m未満はHB(ハード・ビーン)と格付けされます。
一方、カリブ海側では、標高900m以上はHGA(ハイ・グロウン・アトランティック)、標高600m以上900m未満はMGA(ミディアム・グロウン・アトランティック)、標高150m以上600m未満はLGA(ロウ・グロウン・アトランティック)となり、さらに太平洋側とカリブ海側の間では、標高500m以上1000m未満はMHB(ミディアム・ハード・ビーン)と格付けされています。
なお、この規格以外のコーヒー豆は「格付け評価なし」とされ、主に国内向けのコーヒー豆として低価格で販売されています。
コスタリカ産コーヒーの特徴
ここからはコスタリカ産コーヒーの精製方法、味わい・香りの特徴を解説します。
コーヒー産地ごとの味や香りの特徴が分かると、自分好みのコーヒー豆を選びやすくなるのでチェックしてみてください。
コスタリカ産コーヒーの精製方法
コスタリカ産コーヒーの精製方法は、独自の「ハニープロセス」が採用されています。
コーヒー豆の精製法は主に4つに分けることが出来ますが、「ハニープロセス」はパルプドナチュラル(またはセミウォッシュド)と呼ばれる精製方法です。
水洗いをする「ウォッシュド」とコーヒーチェリーをそのまま天日干しする「ナチュラル」の中間に位置します。
コーヒーの精製は、一般的にコーヒーチェリーからまず外皮と果肉、さらにミューシレージという粘液質も除去した生豆を乾燥させます。
しかし、ハニープロセスでは、ある程度のミューシレージを残して乾燥します。こうすることで、生豆にミューシレージの糖分が凝縮され、糖度の高い生豆に仕上がります。
コスタリカのハニープロセスは、ミューシレージを残す割合によって名称が異なり、もっとも精製が難しいとされるホワイトハニーで90%程度、ゴールデンハニーは75~80%、イエローハニーで約半分が除去されます。
さらにレッドハニーでは20~25%除去となり、ブラックハニーでは除去しません。
ハニープロセスの難しい点は、発酵しすぎてしまうことや、欠点豆が混ざりやすくなることです。しかし、コスタリカのコーヒー農家は工夫を重ね、高品質なコーヒー豆の生産を実現しているのです。
コスタリカ産コーヒーの味わい・香りの特徴
コスタリカ産コーヒーの味わいには、豊かな酸味と適度な苦み、深いコクがありながらも軽い口あたりで飲みやすいという特徴があります。
スペシャリティコーヒーらしく上品な味わいを楽しむことができ、またフルーティな香りは、絶妙なバランスに整えられたコーヒーを口に含んだときに「熟したチェリー」を食べたような風味を思わせます。
コスタリカ産コーヒーの品種・種類
ここから、コスタリカ産コーヒーの品種・種類について解説します。
コスタリカでは法律によって、アラビカ種以外のコーヒーの栽培が法律で禁止されています。これは世界でも珍しいことですが、この法律によってコスタリカ産コーヒーの品質は守られています。
栽培されているアラビカ種の中でも、標高の高いところではカトゥーラ種が、標高の低いところではカトゥアイ種が栽培されています。
カトゥーラ種
カトゥーラ(またはカツーラ)種は、1910年代後半にブラジルで発見された、ブルボン種の突然変異種です。
カトゥーラ種は日差しに強いという特徴があるものの、病害に弱く、さらに収穫期間が短いとい欠点があります。
しかし、小型で背が低いため密集して植えることが可能で、同じ作付け面積でもブルボン種より多く収穫できることからコーヒー農家から人気があります。
カトゥーラ種はほどよい甘味と苦み、そして酸味とのバランスが取れたコーヒー豆で、口当たりの良いすっきりした飲みやすさが特徴です。
カトゥアイ種
カトゥアイ種は、カトゥーラ種とムンドノーボ種を人工的に交配して作られた品種です。
ムンドノーボ種は、ブルボン種とスマトラ種が自然交配してできた品種で、収穫量は多いものの樹高が高く、管理や収穫に手間が掛かるという欠点があります。
そこで、収穫量の多いムンドノーボ種と樹高の低いカトゥーラ種を交配させることで、風味がよくて収穫量も多い、さらに病虫害にも強いカトゥアイ種が誕生しました。
カトゥアイ種は全体的なバランスの良さと軽い口当たりから、初心者でも十分楽しむことができるコーヒーです。
コスタリカ産コーヒーの美味しい飲み方
品種や種類について理解を深めたところで、次はコスタリカ産コーヒーの美味しい飲み方を紹介します。
コスタリカ産コーヒーは豆の焙煎度合いや、コーヒー豆の挽き具合、淹れ方によって様々な味わいを楽しむことができます。
おすすめの焙煎度合い
コスタリカ産コーヒーのおすすめの焙煎度合いは、中煎り(ハイロースト)から深煎り(フルシティロースト)です。
中煎りでは、柑橘系の香りが漂う、バランスの良いマイルドな口当たりを味わえます。
深煎りにすればしっかりとした苦味と、ハチミツを思わせる濃厚な甘みを楽しむことができます。
おすすめの挽き具合
コスタリカ産コーヒーのおすすめの挽き具合は、ペーパードリップで淹れるなら中挽きがおすすめです。コスタリカコーヒーの持つナッツ系の香りや、クリーンな口当たりを体験できます。
フレンチプレスで淹れる場合は、コーヒー粉を金属フィルターで押さえて風味を引き出すため、中挽きより細かくしてしまうと十分に抽出できません。
おすすめの淹れ方
コスタリカ産コーヒーのおすすめの淹れ方は、ペーパードリップかフレンチプレスです。
コスタリカコーヒーは85度~90度程度のお湯で入れると、柑橘系のフルーティーな香りとまろやかな口当たりのコーヒーが楽しめます。
ペーパードリップを使用して、92度くらいの温度で淹れるとすっきりとした味わいに。
深煎りした豆をフレンチプレスで、熱湯を注いで淹れると濃い苦みと濃密な甘さが引き立ちます。
コスタリカのおすすめコーヒー豆3選
ここから、コスタリカのおすすめコーヒー豆ランキング3選を焙煎度別に紹介します。
焙煎度が浅ければフルーティーな酸味が他の楽しめ、焙煎度が深いとコクがあるコーヒーが味わえます。
bears coffee コスタリカ セントタラスSHB
bearscoffeeの「コーヒー豆コスタリカ セントタラス SHB」は、SCAA(アメリカスペシャルティーコーヒー)の関連団体であるCQIから、高品質だと認定を受けたQグレードコーヒーです。
コーヒーの香りの中に、ほのかにナッツの優しい香りが漂います。口当たりの非常に良い、カリブ海を彷彿とさせるコーヒーです。
欅cafe&焙煎 コスタリカ コーラルマウンテン
世界でも最高級コーヒー豆の一つとされるコーラルマウンテンは「晴天の日には、美しい藍色に見える」ことからその名がつけられました。
欅Cafeの「欅Cafe&焙煎 コスタリカ コーラルマウンテン」は爽やかな酸味としっかりとした口ごたえのあるボディでありながら、後味はすっきりとしています。
ぜひブラックで、コーヒーそのものの味を楽しんでほしいコーヒー豆です。
Tarrazu コスタリカ スペシャルティコーヒーホールビーンズ
Black Toucan Coffeeの「スペシャルティコーヒーホールビーンズ」は、標高1650mで栽培されたコスタリカコーヒー豆を使用しています。
フルーティーな香りとまろやかな口当たりが特徴です。
コスタリカ産コーヒーの特徴まとめ
世界で1%の生産量であるコスタリカ産コーヒーは、多くのコーヒー愛好家に絶賛される高品質なコーヒー豆です。
8つの生産地域毎に異なる味わいのコスタリカコーヒーを、ぜひ飲み比べしてみてください。
コスタリカコーヒー以外にも、様々なおすすめのコーヒー豆を下記で紹介しています。